FREE BLOG

Vol.68 HISASHI WEBインタビュー

王道のTAKUROメロディを
メンバーが待っていたということは、
ファンの皆さんも待っていたはず。
GLAYはいつも誰かのための曲を歌ってきた自負がある

「あなたといきてゆく」を最初に聴いた時の感想から教えて下さい。

HISASHI:こういう曲をメンバーが待っていたということは、ファンの皆さんも待っていたんじゃないかなというくらい、かなり優等生というかGLAYのフォーマットに則ったTAKUROのメロディだなと思いました。最近はTAKURO以外のメンバーがシングル曲を書いたりしていたので、GLAYの王道メロディを聴きたいなというリクエストは、僕の中でありましたし、そろそろそういうタイミングなんじゃないかなという話はメンバーにしました。

春の『GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2017 Never Ending Supernova』(※1)からすでに披露していましたが、お客さんの反応をどういうふうに感じていましたか?

HISASHI:やっぱり落ち着くんじゃないですかね。ソロも含めてTAKUROのロックンロール時代が到来していたので、そういう曲がある中で「あなたといきてゆく」(※2)のような曲は、やっぱり安心すると思います。今まで王道以外の曲を聴かされていたリスナーの方は、若干不安に思っていたのではないでしょうか(笑)。

頭の<年が明けたら結婚しようよ>という歌詞が強烈ですが、詞に関してはHISASHIさんどういうふうに思いました?

HISASHI:10代の頃に「ずっと2人で…」という曲を作って、これはTERUのお姉さんの結婚式に向けて書いて、その後に、友達に息子が生まれたということを聞いて「グロリアス」(※3)を書いたり、その世代によって常に誰かのために曲を書いているなという気持ちはあります。その集大成のような、40代半ばで書く歌詞としては、非常にすんなりと入ってきました。人生を背負いながらバンドをやってきた結果、GLAYの曲を結婚式で使いたいと言ってくれる人も多いですし、今ライヴに三世代で来てくれる人とか、若い人もたくさん聴いてくれているという話を聞いて、我々の世代も親になってくるという事で、自然とこういうメッセージが生まれるのではないかなと。もう孫ができていますよ、「グロリアス」が生まれるきっかけになった子は(笑)。

デビューして23年、時間が経ちました。

HISASHI:結成して30年近いですし、しかもその間ほとんど活動休止することもなくやってきたので、本当にその時々の歌をリリースし続けてきて、それはファンの方も同じだと思います。例えばパートナーと出会って別れて結婚してとか、そういうバックグラウンドにGLAYの音楽が流れていると、すごく嬉しいですよね。

それぞれの時代の様々なシーンにGLAYの曲は寄り添っているということですよね。

HISASHI:しかも音楽の伝わり方はかなり変わってきたと思うし、配信やサブスクリプションが始まってデジタル化してきて、ミュージシャン的には面白いくらい色々なことがありました。その中で僕たちは面白がりながら、自分たちの活動を飽きることなくやってこれたというのは、すごく幸せだなと思います。ライヴでもレコーディングでも、刺激的な日々を送ることができています。

『SUMMERDELICS』(※4)がまさにそうですよね。

HISASHI:今の環境がさらにGLAYを自由にさせてくれているような気がして、無理なくのびのびとやっています。

『SUMMERDELICS』を聴くと、HISASHIさんの頭の中を覗きたくなるくらい、トリッキーで、惹きつけられる曲が多いですよね。同時に、聴き終わるとやっぱりGLAYなんだという安定感も感じることができます。

HISASHI:最終的にTERUが歌うことが前提にあるので、どれだけ冒険してもTERUというフィルターを通すことによって、随分と間口が広くなります。曲に説得力を与えてくれるし、どんなに自由なことをやっても、毎回魔法のようにそうやって仕上げてくれるので信頼しています。

それぞれが強力に信頼し合っていて、それぞれの役割分担がしっかりあって、でも一つの核があって、芯が通っているのがGLAYですよね。

HISASHI:そうですね、たぶん僕がアルバムの中で、真ん中から外していくポイントは、信頼されているからこそできる部分と、本当に気をつけて挑んでいかなければいけない部分とがあるので、そういう意味では僕自身がストッパーにはなっているんですよね。

HISASHIさんがキーマンとなっている今回のアルバムですが、実際にライヴでやってみて、感じ方はどう変わってきましたか?

HISASHI:僕らはすごく純粋にやっていたつもりですが、リリース前はどういうふうに受け止められるんだろうという不安がありました。でもお客さんはみなさんライヴを楽しむのがうまいですよね。自分なりに解釈して、自分なりに楽しんでいるところが。「あなたといきてゆく」というGLAYの王道曲があるのはもちろん承知の上で、それプラス、メンバーの遊びという部分に付き合ってくれている感じがします。アリーナ向けに作ってたんじゃないかっていうくらい、一曲一曲の会場適応能力は意外と高かったですね。これは確かにライヴはもちろんだけど、商業的要素も音楽の中に含まれているのかなっていうくらい、そういうところって作るのが難しいと思いますが、それが大きなアリーナのスペースに相応しい楽曲に仕上がっている感じがします。

GLAYらしさも感じさせてくれつつ、斬新で新鮮、このキャリアでこういうアルバムを作りあげるのはすごいなと、GLAYの底力を見せつけてくれました。

HISASHI:デビューして23年も経つと、ベテラン感が出てもおかしくないですが、常に音楽的な挑戦や冒険心を持って活動しています。レコーディングとライヴを天秤にかけた時、やっぱり僕はレコーディングの方が好きなんですよ。新しいものがそこから生まれていくという意味では。でもやっぱりレコーディングだけでなく、ライヴで音が初めて空気と混ざる瞬間であって、そこで初めてお客さんが体感するということになると、ライヴもレコーディングに近い、新しいものを生み出す瞬間なんだなと、今考え方が変わってきています。

圧倒的なライヴの面白さも、GLAYの強さのひとつです。

HISASHI:やっぱりメンバー全員が音楽ファンであり、リスナーであり、お客さんを楽しませたいし、自分も楽しみたいという気持ちが強いのだと思います。それぞれが面白いと思っていることが、音楽を作ることだけではなく、エンターテイメントとして披露し続けてきたことが、今に繋がっているのかなと。僕は舞台をよく観に行くのですが、ライヴの技術とは全く違うアイディアがたくさんあって、ヒントがいっぱいあります。照明とか特効もそうですが、それ以外のアイディアがライヴにおけるひとつの要素として、すごく大事になってきていて、舞台に影響を受けたりすることはあります。

今回のアルバム、ライヴを通して、その斬新さに戸惑いを感じている人もいるのでは、とTAKUROさん言っていましたが、HISASHIさんの中ではどう感じていますか?

HISASHI:そうですね、今回は結構奇抜なアイディアが多くて、新しいことをやるときは犠牲がつきものだと思うので、そこからまた新たなGLAYのスタイルが生まれてくると思っていて、そういうった犠牲は僕は恐れないようにしています。

HISASHIさんの世界観が、今のGLAYにいい差し色になっていますよね。

HISASHI:僕は新しい機材もそうですし、SNSのような時代のツールも、結構躊躇することなく早い時期から使っていて、だからそれまで出会うことがなかったジャンルの方と知り合って仕事ができるので、それをGLAYの音楽に反映できたらといつも考えています。

HISASHIさんの中で、新しいものを取り入れたり取り組んだりする時は、GLAYとしてはこれ以上は、とか、ここまで、ということはやはり考えるのでしょうか?

HISASHI:それは考えますね。でもそれによって面白さや楽しさが半減しないように気をつけていて。伝わり方が人それぞれ違うので、今回のライヴでも、映像で今までは見せてこなかったセクシャルな部分とか、そういうアプローチをしたいなと思って、でもそのさじ加減がすごく難しくて。やり過ぎてもダメだし、逆にやらなさ過ぎてもダメだしというところで、映像素材の選び方も考えに考えて、幼稚になったり、過激になったり、絶妙なバランスのところを探しましたね。やっぱりそのさじ加減が一番大事で、お客さんの評価が、全てにGLAYに向かってきます。意外とここまでやってもいいんだと思ったり、これはダメだったかという事もあり、毎回アップグレードしながらやっています。今回もセットリストはJIROが考えてくれ、序盤のプロックは僕のカラーが強くなっていて、こんなことできるのかなっていうことも、映像のスタッフと今までないくらいこだわって作り上げました。最終的に最後の曲が終わった時には、この20年間で作ったGLAYの世界観が残っていて、結局何も変わっていないんだねって(笑)。毎回そうなんですけど温かい雰囲気で終わるという。

それがGLAYのバンドとしての強さで、新鮮さを上乗せし続けている、更新していっているということですよね。

HISASHI:そうですね、更新という表現が近いと思います。最近のアリーナツアーでは、かなりメンバーのアイディアによるところが多く、音プラス演出で、さらにその曲の伝わり方や魅力が膨らむと思うので、リハーサルでは演出のことを常に考えています。逆に全く演出がいらない曲もあったり、それはそれでひとつの見せ場にもなると思うし。今回のツアーほどこだわったツアーは今までなかったかもしれません。

そのツアーも後半戦に突入しました。

HISASHI:リハーサルの時間を十分にもらえたし、映像のアイディアをしっかりつめることができたので、実は初日から割と完成度が高くて。僕らが今やりたいことはこれですという意志表示が、初日にしっかりできたという自負があります。

TAKUROさんは『SUMMERDELICS』を第二のデビューアルバムと言っていましたが、発売から少し時間が経って、ライヴでも何度も演奏して、改めてこのアルバムはHISASHIさんにとってどんな存在でしょうか?

HISASHI:たぶんみんなが肌で感じているのは、20周年を終えての次のGLAYの展望というか、また新たなスタートラインに立てたということだと思います。それは僕もすごく感じています。10年、20年というのは確かにただの数字かもしれないけれど、僕らの中では大きな区切りになっていて、20年続けてきて、これから30年、40年とどういう風にバンドを運営していこうということを考えるきっかけの一枚にはなりました。GLAYって結構計画的なバンドで、10年ぶりの東京ドームや、20周年で色々な場所に行ったり、そういうことが計画的に行えていたので、今後はどういう態勢で挑めばいいのかが、このアルバムではできていると思います。でもまだまだやり残したこともあるので、次にやりたいことリストはもうすでにかなりあります(笑)。

TAKUROさんだけではなく、メンバー全員がシングルを手がけることも増えていますが、これからも多くなりそうですか?

HISASHI:必要に応じてだと思います。でもシングル曲を作りたいとはメンバーは思っていないと思う。もしそのシーンに合う曲を作れたら協力したいな、というスタンスだと思います。むしろ90年代よりもシングルという定義が甘くなってきていて、今回の「WINTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~」もそうですが、ギフトに近い感覚だと思います。リスナーにいち早く聴いてもらうために作る曲というか。リード曲があったら、おまけもたくさんつけてという感じで、最近のシングルにはすごくギフト感を感じます。

「あなたといきてゆく」は、どこか郷愁感が漂うというか、どうしても函館の風景をイメージしてしまいます。

HISASHI:やっぱりそうですよね。海外でいうとアイルランドとか、メンバーから滲み出る冬感っていうのはありますね。

曇りなんですが、時々日が差しこんでくるイメージが、GLAYの曲は多い気がします。

HISASHI:函館は本当に曇りの日が多かったので、低い雲の感じはたぶんメンバーの意識の中にありますよね、秋から冬にかけての寒くて淋しい感じとか。

斬新なアルバムを引っ提げてのツアー中に、いわゆる王道ソングをリリースするのもGLAYらしいファンへのサービスという感じがします。しかもアルバムに収録されるはずだった曲です。

HISASHI:そうなんですよ。曲として完成度が高い優等生の曲は、意外とアルバムには混ざらないんだなというのが今回わかりました(笑)。でもウエイトもかなり重い方なので、夏よりは冬に出せた方がよかったと思います。

これからのHISASHIさんは、プレイヤーとしてもソングライターとしても、色々な人と組んでやりたいという気持ちが強くなっていますか?

HISASHI:そんなに強くはないんですけど、いい出会いがあってそこでの化学反応、摩擦という、そういう熱は信じたいですね。

GLAYのメンバー全員のロックへの熱も、今回のアルバムもそうですが、どんどん熱くなっている気がします。

HISASHI:ロックンロールにずっと憧れてきて、それは今も続いていて、まだロックに騙されている感じは続けたい(笑)。騙されているのは知っているけど続けるよ僕らは、という感じだと思います。お利口さんにならないで、でっかいロックンロールショーを観にきてよ、どうせならミュージシャン目指してよと、純粋に思える世代になりましたね。ロックンロールのバカらしくてでもカッコイイ、そういう幻想にずっと憧れています。

最初にも出ましたが、強力な信頼関係は、本当に仲がいいからこそですよね。そこが最大の武器です。

HISASHI:GLAYありきなところがあって、GLAYというバンドがあるから音楽をやっているんじゃないかなって。これを大事にしなくて何を大事にするのか、という気持ちはますます強くなっています。


※1:『GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2017 Never Ending Supernova』
2017年4月14日(金)島根県芸術文化センター「グラントワ」から5月25日(木)石川・金沢歌劇座で行われた追加公演まで、全10都市14公演(振替公演も含む)で開催されたホールツアー。

※2:「あなたといきてゆく」
2017年11月22日リリースのシングル「WINETRDELICS.EP~あなたといきてゆく~」収録の表題曲。TAKURO作詞・作曲による壮大なバラード。

※3:「グロリアス」
1996年1月17日リリースの8thシングル。ヴィクトリアのCMソングに起用され、シングルとしては初のオリコントップ10入りを果たした初期の代表曲。

※4:『SUMMERDELICS』
前作より2年8ヶ月ぶりとなるGLAYにとって14枚目のオリジナルアルバム。2017年7月12日(水)発売。7月24日付けオリコン週間CDアルバムランキングで1位を獲得した。CD Only盤、CD+2DVD盤、5CD+3Blue-ray+グッズ盤(初回生産限定・豪華BOX仕様のG-DIRECT限定Special Edition)の3つのバージョンが発売された。