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HISASHI WEBインタビュー

12月5日2枚同時発売のニューシングルをHISASHIが徹底解剖!

――やっとレコーディングも一段落、という感じですか?

HISASHI:そうですね。夏の長居スタジアムを挟んでのレコーディングでしたから。とにかく、できた作品をいち早く聴いてほしいんですよ。いい楽曲ばかりなんですけど、なかでも古い曲よりも新しい曲を選んじゃいますね。バンドの状況がいいので、曲が生き生きしていて、できた曲を早く届けたい。

――たまったものは吐き出さずにいられないというか?

HISASHI:ま、それがいいか悪いかはあとで判断しますけど。音楽のアウトプットが変わってきていますから、どんどん吐き出す状況がいいか悪いかは分からない。でも、今のGLAYの状況はすごくいいので、それに従い素直にやろうと思っていて。もしかしたら、未来に10曲で完結できるコンセプチュアルなアルバムができるかもしれないけれど、今はあえて気付かないことにしておこうと(笑)。今はそういうことに関係なく、素直に思ったことを伝えたいので。

――その創作意欲の表れが、今回のシングル2枚同時リリースに結びついたんでしょうか?

HISASHI:たぶん、それはTAKUROの思いつきだと思うんですけど(笑)。ま、曲はあるし。

――しかも、タイトル曲がそれぞれHISASHIさん、JIROさんの作曲という、今までになかったパターンですね。

HISASHI:なかったですね。TAKUROが今のGLAYに混ぜたいエッセンスが、俺の持っているものとリンクしたんじゃないかなと捉えてますけど。今まで脈々と続く、俺が作るマイナーメロディの流れがあって、その最新型ですね、「JUSTICE [from] GUILTY」は。

――そもそもこの曲はシング用に書いたわけじゃなくて?

HISASHI:違いますね。全部の曲がそうですけど、シングル用にというのはなくて。TAKUROがタイアップの曲でタイミングを狙って作る時はシングル用に作りますけど、今回は違いますね。もう、シングルの形というものも、GLAYの名刺的なものではなくなってますから。トライするきっかけになるものというか、今まで使ったことのない武器を使ってみるという感じです。

――新兵器の登場?

HISASHI:ええ、昔みたいにチャートを意識したりとかセールスとか、そういうものとは違うところでシングルを考えているので。実験的なツールになってます。

――あえて、なんですか?新鮮な切り口とか、今までにない自分たちを見せたい?

HISASHI:うん。ただ、2枚同時リリースというのが14年ぶりだったので、バンド内バトルロワイヤル、みたいな(笑)。そういう空気の入れ替えですね。それはやっていて刺激になります。

――確かに同じことを繰り返していたら停滞して、空気も淀んでくるし。

HISASHI:そうです。GLAYが持っているビート感とか、170~180bpmのテンポで作る楽曲というのは得意だから、それをやってもみんな驚かない。なので、GLAYでの楽曲制作は修行みたいなもんですね。

――今でも修行ですか?

HISASHI:今でも修行です(笑)。

――そもそも、この「JUSTICE [from] GUILTY」の成り立ちは、どういうプロセスで?

HISASHI:メロディは古くからあったんですけど、世界観と歌詞の雰囲気がまったく俺の中ではなかったんです。仮歌詞はあったんですけど、俺が見えている作品だと、ゴールが見えているからつまらない。そこで、TAKUROだったらどういう歌詞にするだろう、と。で、お願いしました。

――メロディ自体はHISASHIさんですか?

HISASHI:そうです。転調も多いし、サビの高いところとAメロでは音程の差がずいぶん激しいから、だいぶキーを下げたんですけど。

――レコーディングでこだわったのはどういう部分ですか?

HISASHI:今回からエンジニアを、小西康司さん(Kurid International)という方にお願いしたんですけど。ACE OF SPADESもそうだし、古くはRallyという俺とTERUのユニットとか、ザ・マッド・カプセル・マーケッツもそう。スターリン、RIZEもやっていて、音の好みが俺の好みとぴったりだったんです。GLAYのメンバーに、ACE OF SPADESをやっていたエンジニアの小西さんにお願いしてみないかという話をしたところ、小西さんの人柄もあり、メンバーと溶け込み、すごくメンバーに近い立場でレコーディングできたんです。あと、このシングル2曲とも、凛として時雨のピエール中野君にドラムを叩いてもらっているんです。

――それも新たな試みですね?

HISASHI:以前から好きなバンドで、特に中野君のドラムが好きで。一度、セッションしてみようという話をしていたんです。今回、永井利光さんがスケジュール的に難しいということもあったし、中野君のタイミングが合ったので。時間的な余裕があったので、4曲ぐらい叩いてもらいました。リズムが変わるとバンド全体の雰囲気も変わって、すごく楽しかったですね。スリリングになったし、音の勢いが増しています。

――エンジニアとドラムが違えば、変化も大きいですね?

HISASHI:どちらも自分発信だから緊張したんですけどね。やっぱりJIROとTERUは音にうるさいので、もしかしたらGLAYには音が固すぎるとか、ベースとドラムのコンビネーションはどうなんだろうっていう不安もあったんですけど。でも、すごくうまくハマりました。

――ACE OF SPADESの音からつながるような手ごたえもありますね?

HISASHI:エンジニアが小西さんですからね。あと、「JUSTICE」というのは長居スタジアムに向けて作ったゾディアック(Zodiacworks)のギターの名前なんですけど、ネーミングを決めた時、この言葉しかないなと思って。もう1本、色の反転バージョンを作りたいと思って、「JUSTICE」の反対なら「GUILTY」と付けようと言ってたら、TAKUROが、じゃあアルバム・タイトル、それにしようという感じで。本当にそれでいいの(笑)。そういった流れもあって、この2012年を通して、言ってみれば2011年から2013年にかけて、点が線でつながっている感じがしますね。

――知らず知らずのうちにつながっているんでしょうね。

HISASHI:それは必然的なものだと思いますね。みんなどこかにJUSTICE=正義感を持っていて。でも、自分の正義感と他人の正義感は違うから、そこがまた面白いところなんですけどね。改めて考えさせられる言葉だったりして。答えは出なくてもいいと思う。考えるきっかけになれば、一歩踏み出すチャンスになると思うので。特にこの「JUSTICE [from] GUILTY」はそうですね。「運命論」とは違った発想で。また、MVも面白いですよ。

――どんな感じですか?

HISASHI:いや、分からない。やれと言われたことをやっただけで全く分からない(笑)。

――あとで大幅にCGが加わるから?

HISASHI:みたいですね。俺が演奏したシーンとか、5分ぐらいしかないんじゃないかな。待機時間が6時間、撮影5分、分からないな(笑)。トリッキーな作品になると思います。この曲は、ただかっこいい演奏をしているだけのMVにはしたくなかったので、もっと変な作品というか、プロモーションツールとは考えていないので、自分が見たくて刺激になる作品に仕上がってくれればいいな。

――そこでも実験精神が発揮されていますね?

HISASHI:そうなんです、何か今までのスタイルに飽きてしまうんですよね。

――レコーディングの話に戻りますけど、イメージどおり作業は進みました?

HISASHI:そうですね。GLAYが築き上げてきたビート感プラス、自分が影響してきたものを素直に楽曲に反映させるという、そういうスタイルは変わらずあるんだなと。

――そういう意味ではストレートですね。

HISASHI:もうそれしかないですね。変化球は当分、いいかな。あと、TERUの歌がすごいです。

――すごく届きますね。歌詞はTAKUROさんにイメージを伝えたりとかは?

HISASHI:いや、まったくなくて。

――上がった歌詞を見て、どうでした?

HISASHI:ああ、こういう世界観だなって。関心というか尊敬しますね。音に呼ばれる言葉というものがあるとしたら、こういう結果になるのかなと思いました。

――物語というか、何か宿命を背負った人物のドラマが浮かんできますね?

HISASHI:うん。TAKUROが歌詞、俺が曲、という組み合わせは初めてのパターンですね。この逆はあったけど。曲に対してのストーリーの、その向こう側が見たかったんですね。バンド内コラボですね。俺が作った曲にどういったストーリーを付けるんだろうって。それは前々からやってみたかったんですけど、今回、初になりました。

――他の楽曲ですけど、「MILESTONE~胸いっぱいの憂鬱~」は爽快な曲ですね。

HISASHI:GLAY節ですね。コード進行と歌の譜割にTAKUROの癖が出ています。原曲はリズムが凝りすぎていたので、今回のセッションでアレンジし直して録り直したんです。佐橋佳幸さんのマンドリン、バンジョーが知らないうちに入ってました(笑)。

――「Time for Christmas(Club mix)」はリミックス・バージョンですね。

HISASHI:これもKurid Internationalの草間敬さん(coyote, colored darkness等のアレンジを担当)がリミックスを手掛けているんですけど。小西さんと一緒に仕事をやることがきかっけで草間さんにこういうリミックスをお願いできるというところも、物語的につながってますね。

――12月リリースだから、あえてクリスマスソングを?

HISASHI:それもありますけど、自分たちが聴きたいという欲求がありました。だから、草間さんにはガラッと変えてほしい、ギターもベースも入らなくていいから、切って貼っていいからって。自分たちが聴きたいリミックスを素直にオファーしました。これはメンバーもお気に入りの作品です。こういう草間さんのど真ん中のクラブミックスもTERUの声に合うんだなと再認識しました。

――もう1枚の「運命論」はJIROさんの曲ですが?

HISASHI:これはGLAYができるだけ大きな曲にしたいなと思った歌ですね。俺たちから見える大陸的なものというのは北海道であって、アメリカでもないしイギリスでもない。やっぱり自分たちの育ってきた所というか、そういうものが大陸的な所なのかなって。そういった温かみが出ればいいなと思った曲ですね。

――親しみや素朴さもあって、シンプルなメロディがじわじわと染みてきますね?

HISASHI:シンプルです。JIROの作っている曲はシンプルなものが多いですね。その中で、GLAYでアレンジしやすくて、TERUの歌のアイデア、自分のギターのアイデアも試せるみたいな立ち位置の楽曲なので、やりがいがすごくありました。

――ストリングスが効果的ですね?

HISASHI:これは永井誠一郎さんのアレンジで。変化の付け方も、バンドのアンサンブルとストリングスでドラマチックな流れになったんじゃないかと思います。

――ストリングスがねじれながら終わるところは後期ビートルズのような。

HISASHI:ああ、小西さんも大好きなので、そういった録り方をしています。チェロの低音がいいですね。

――ちなみに、こちらのMVはどんな仕上がりですか?

HISASHI:千本ぐらいの蝋燭をキャンドル・ジュンさんにセッティングしていただいて、その中で演奏しているんですけど。すごく幻想的で、これも出来上がりが楽しみです。

――「4ROSES」。こちらはストレートな曲ですね?

HISASHI:これは何もひねっていないです(笑)。俺一人でレコーディングしたかな。かなり古い曲です。ずいぶん前に録りました。この方程式にはこういう答えしかないっていう収まり方をしている曲です。

――「Route 5 Bayshore Line」。これはライブでやっていましたね?

HISASHI:やってました。大阪をテーマに作った曲なので。TAKUROが、行きつけの関西風お好み焼き屋の店員さんに聞いて考えた名所巡り、その努力も垣間見えますね(タイトルは阪神高速5号湾岸線のこと)。夏のイベントに結びつく曲としては、久々の作品になりました。あと、何気にスルーされてますけど、アルバムフラッシュ、俺が作ったんです(笑)。

――両方ともですか?

HISASHI:2枚とも同じものなんですけど、4分ぐらいの内容で。次のメロディの頭の歌詞だけ聴かせてフェイドアウト、みたいな。これだけでも聴きごたえがありますよ。GLAYらしくもあり、らしくない曲もあり。何か知らないけど、俺の仕事になったんですね。これ、俺のやることかな?って思いながら(笑)、みんな忙しそうだったから作ってみました(笑)。アルバムを楽しみに待っててください。



TEXT:岡本明