Vol.54 WEBインタビュー
2015年5月30日・31日に開催された、GLAYにとって10年ぶりの東京ドーム公演。その模様を完全収録したDVD&Blu-ray『20th Anniversary Final GLAY in TOKYO DOME 2015 Miracle Music Hunt Forever』が11月11日にいよいよリリースされる。PREMIUM BOXとSPECIAL BOXには、2月8日に行われた横浜アリーナ公演も収録。ライブ3公演の監督を務めた映像界の異才・森田空海氏と、GLAYのマネジメント戦略を束ねる熊谷祐一の2人が語る、撮影秘話、作品の見どころとは?
■森田空海(もりた・くうかい)/演出業ほか。
1965年、大阪府出身。TV番組制作会社でキャリアをスタートし、1991年、スペースシャワーTVの開局2年目に移籍・上京。現在はフリーランス。ドラマや舞台、MV・ライブ映像・音楽番組などの演出を多数手掛ける。
ライブ作品の代表作に、『STARDUST REVUE オールキャストで大謝恩会』(DVD)、『由紀さおり & Pink Martini Japan Tour2012』(WOWOW)、『KYOSUKE HIMURO 25th Anniversary TOUR GREATEST ANTHOROGY -NAKED-FINAL DESTINATION DAY-01 & DAY-2』(DVD)などがある。
※公式HP
http://rehab1105start.wix.com/kookai-morita#!home/mainPage
――最初に、森田空海さんに監督をお願いすることになった経緯から教えていただけますか?
KUMAGAE:『GLAY EXPO 2014 TOHOKU 20th Anniversary(※7)』の際、WOWOWさんで生中継をすることが決まり、局のプロデューサーさんと話をしている時に、空海さんのお名前が挙がったのがきっかけです。その時に資料として観せていただいた作品がものすごく良くて、「是非ご一緒したい」と思ったのですが、EXPOはもう監督が決まっていたので、「次回のGLAYの作品で」となりました。当時は横浜アリーナ公演(※8)を単体の映像作品としてリリースする想定をしていまして、まずはそちらを撮っていただこう、と。それに先立ち、アリーナツアーを何公演も観に来ていただくことになったんです。
森田さんの映像のどんな部分に惹かれたのでしょうか?
KUMAGAE:言葉で説明するのは難しいのですが、荒々しさというか、ミュージシャンを撮るにあたってのスピード感のようなものが抜群でした。すごくカッコよく切り取ってくださる方だな、という印象がありました。
MORITA:ご一緒するのは今回が初めてですけど、僕の人生もGLAYが過ごして来た時代と共にありましたから。縁を感じて、お引き受けすることにしました。
KUMAGAE:本当に「はじめまして」からのスタートでした。
MORITA:はい。だから、「横浜アリーナ公演が試験みたいなもんや」と思っていたんです(笑)。
KUMAGAE:いえいえ(笑)。
実際にGLAYというバンドに向き合われて、どんな印象を受けられましたか?
MORITA:とにかく、めちゃくちゃ仲がいいですよね。それと、「解散しません」宣言をしたぐらいですから、根っから、本気の塊でずっと20年間続けてきたんだろうし、だからこそスタッフがたくさん付いてるし。横浜アリーナ公演を撮る前に、大阪や徳島、福井でのライブも観たんですが、どの会場も満席。立ち見で(お客さんが)ビッシリなんですよ。「これはすごいな!」と。こういう日本のバンドがきちんと存在しているんだな、と感じたし、これはますますヘタなことはできんぞ、とも思いました。
撮り方、コンセプトはどのように決められたのですか?
MORITA:先ほど熊谷さんからもお話があったように、当初、横浜アリーナ公演を単体の作品として出す計画もあったので、たくさんのカメラ台数の撮影プランをまずは一度プレゼンしたんですけれども、その後減らした、という経緯があるんですね。減った状況の中でどうするか?と考えた時、横浜アリーナ公演をいかにも「横浜アリーナです!」という(大会場らしい)撮り方をするのではなくて、ライブハウスのような感じで撮りたいな、と思ったんです。台数が少ない分、手持ちカメラにして、振り回して。そのため、想いのほか乱暴な映像になったので、最初は「そこまでやるか!」と、かなりビックリされたと思うんですけど(笑)。
KUMAGAE:(笑)。空海さんの作品を最初に観た時、その荒々しさが良かったので、「ハンディーカメラをたくさん入れる」と聞いた時も、「いいじゃないですか?」と思ったんです。でも、最終的に図面を見た時に、「あれ? ここまで極端に入れ替える…?」と驚きました(笑)。でも、ファンの方はご存知のごとく、僕らはこれまで既にたくさんのライブ映像作品をつくってきていて、同じことやるのはまったく面白くないので、懸けてみよう、チャレンジしよう、と。結果的に、東京ドーム公演の映像との差別化ができましたし、良かったです。
MORITA:そうですね、たしかに。
東京ドーム公演は、GLAYにとってもファンの方々にとっても特別な意味のある公演でしたが、そういったライブを撮られるにあたり、いちばん心掛けたことは何ですか?
MORITA:撮らせていただいたのは本当に光栄なことですが、"GLAYの20周年"という部分に自分が沿い過ぎてしまって、のめり込んでしまうとダメだ、とも思っていたんです。これはどのライブでもそうなんですが、僕は基本的にあまりアーティストの"ファン"にならないようにしています。俯瞰で客観的に観て、ファンの方はもちろん、それ以外のより多くの方も観られる作品にしなければいけない、と思っているので、その姿勢はどのライブでも崩したくない。その中で、20周年という華々しい、いわば目的地点をどう押さえていくのか?ということですね。それと僕は、ライブは"ありのまま"が一番だと思ってるんですよ。でも、ありのままをそのまま見せたいんだったら、今は解像度のいいカメラがいくらでもあるので、1台でいいじゃないですか?
しかし、そういうありのままではなくて、例えば、ギターを弾く手元だったり、顔のアップだったり、そういったアングルなどを駆使して、会場では観られない映像を組み立て直し、本当のありのままにどれだけ近付けて行けるか。そこがライブ映像の演出の醍醐味だと思っているので、ブレないように心掛けて。編集している時はのめり込みますが、何度も何度も"上から"、ドーンと構えて冷静に観る自分に戻るようにしています。その感覚を編集中ずっとキープするのが僕の仕事。でも、今回は3つのライブで全70曲以上、とアイテム数がものすごく多かったので(笑)、それが一番大変でした。
メンバーから、撮影に対するリクエストはあったのですか?
KUMAGAE:毎回違う撮影を試みる中で撮影済みの映像を観て「この撮り方は、効果的では無いので次回からは辞めましょう」といった意見などありました。例えば今回、東京ドームで初めてフライングモンタ(空中特殊撮影機材。サッカーのワールドカップや映画などで活用されている)を導入したんですね。4点吊りでケーブルを引っ張って操作し、変幻自在に動けるカメラでして、ステージに向かってスーッと近づいていくようなダイナミックな撮影が可能になりました。観ていて「気持ちいい!」と感じていただけると思うので、ご覧になった方には是非その箇所を見つけていただきたいな、と思います。
MORITA:初日の「浮気なKISS ME GIRL(※6)」で、2つのデベソ(アリーナにせり出した花道)にメンバーが出て来たところをカメラが真上でグルッと回って撮っているんですが、そこが一番(フライングモンタの映像を)長く使っているカットです。あんなの、普通のカメラでは撮れないですからね。
KUMAGAE:そうですよね。今回、台数を減らした横浜アリーナ公演でもカメラ30台、東京ドームは何台入れたんでしたっけ…?
MORITA:ええと、ザクッと数えても50台ずつです。通常のドーム公演の台数を考えると、多いと思います。編集はやはり、そのために時間が掛かりましたね。横浜のライブの最初のバージョンの編集がだいたい1週間から10日でできたんですけど、東京ドームはそれぞれ2週間越えで、15、16日ぐらいずつ掛かりました。
KUMAGAE:カメラ素材から、空海さんの思うベストの方向に引っ張っていくわけですからね。 編集はすごく長い道のりですね。
MORITA:横浜、ドームのDAY1、DAY2で、同じ曲をやっていても同じように見えるのは僕の職業倫理上絶対にダメなので、全部違うものにしたい、というのはまずありましたしね。それと、できるだけ何回も観てほしいし、飽きの来ないものにしたかった。50カメもあると、方法論は100億通りほどあると思うんですよ。アングルだけではなく、使う秒数が違っても変わってきますし。でも、正しい答えは5つぐらいや、と僕は思うんです。早い段階で1つに絞り込まないほうが良くて。そして、さらにひとつを目指すのではなく、3つに入るぐらいを目指して、徐々に突き詰めていく。それが今回もできたし、僕らの正しい仕事なのかな?と思います。
KUMAGAE:東京ドームほどの大きさになると、メンバー全員がずっとアクションをしているので、(カメラで)追うのも大変も大変とは思うんです。例えば、ここでHISASHIが手を挙げていたけど、同じ場面ではJIROもジャンプしてるなど。ですので僕らも現場で起きたことを必死で思い出しつつやるんですが、「でも、この場面を切り取ってないということは、空海さん、こっちを推したんだ」というのも推し量って。そういう組み立ては本当に難しいな、と痛感しました。
MORITA:同時進行でいろんなことが起きりますからね。だから、いくらここでTERUがカッコよくても、あえてTERUに行かず、TAKUROに行く。その心は、その何秒後か、あるいは数十分後かに、もっとカッコいいTERUが出て来るから。そのためにここではあえてTERUを見せない。そういうやり方があるんですよね。編集って、切ったものを「素材を捨てる」と言うじゃないですか? でも捨ててはいないんですよ。僕の場合は「含む」という考え方なんです。後々、切った映像よりもカッコいいTERUを見せる、という組み立て方ですよね。
今回、森田さんがいちばん苦労された曲というと何でしょうか?
MORITA:曲としてはやっぱり「BLACK MONEY(※1)」。一番時間が掛かったんですよねぇ…。いわゆるパンクな曲じゃないですか? でも、JIROとHISASHIがけっこう接近するので、(2人の間にカメラが割って入れないため)非常に撮りにくい、という技術的な問題がまず一つ。それに、最初は激しく始まるんだけどもすぐに歌い出して、それ以降は人物的にはさほど動かない。歌詞の文言やサウンドは過激なんですけれどもね。かつ、あの曲の空気感とビートを出すために、1回ある編集プランを提案したら、「もっと激しくお願いします」と。だから、「いいんですか?」ということで本当に無茶苦茶やったら、「ちょっとやりすぎです」と返って来まして(笑)。
KUMAGAE:ははは!
MORITA:その駆け引きを繰り返す中で、気が付けばものすごく時間が経っていて。すごく短い曲やのに(笑)。結局、30時間ぐらい掛かりましたよね?
KUMAGAE:ご尽力、有難うございます。
MORITA:僕、「好きにやってください」と言われると、リミッターが外れるタイプなので(笑)。
KUMAGAE:横浜アリーナ公演でお仕事をご一緒した時に、それは分かりました(笑)。でも、最終的にはめちゃくちゃカッコよく仕上ったので、「BLACK MONEY(※1)」には是非注目していただきたいです。
では、森田さんにとって一番グッと来た、涙腺が決壊するポイントはどこでしたか?
MORITA:「軌跡の果て(※5)」と、最終日の「MUSIC LIFE(※2)」かな。特に「軌跡の果て」は、初日と2日目を観比べていただきたいですね。連続で観ていただくと、より感動が深まると思います。それと、冒頭でメンバーが出て来てファンの方たちが狂喜する場面。ああいうのを観ても、僕、やられてしまうんですよね。
KUMAGAE:歓声がものすごく大きかったですしね。
待っていた皆さんの熱がひしひしと伝わってくる、大変エモーショナルなオープニングでした。
MORITA:ライブ編集は、オープニングから最初のMCが入るまでが肝なんですよ。「よし、続けて最後まで観よう」とか、「もう一回、巻き戻して観よう」とかいう気にさせる、いわゆる掴みですよね。そこを外してしまうとダメなので、そのセクションをガッチリ固めるまでに、かなり時間を掛けました。最終的に、泣いたり感動したり、「カッコいい!」とか「会場にいるみたい」と思わせたいわけなので、そこに対して"正しい入り口"になってるかどうか?ということですね。だから、すごいカメラワークを小出しにして見せたり、僕の編集の味を出したり。例えば、横浜アリーナ公演の冒頭には、(カメラを)振り回しているカットをちょっと入れたりして、「今回はこれで行きますよ」と示す、ということですね。
冒頭でスタイルを"宣誓"して惹き込む、ということでしょうか?
MORITA:そうですね。それが僕の狙いですし、そうあるべきだと思ってます。
2日目、デビュー曲「RAIN(※3)」でYOSHIKIさんが登場される場面はハイライトでしたが、どんなことに気を配られましたか?
MORITA:GLAYにとっての原点で、思い入れが一番ある曲でしょうから、神妙に撮っていましたね。メンバーもずっと、感極まっていましたから。実際、現地でのリハーサルは1回ありましたが、ほぼ一発本番みたいな気持ちでカメラマン、スタッフは撮っていました。
恩人であるYOSHIKIさんとGLAYの歩みについては、事前に資料をご覧になってから撮影に臨まれたのですか?
MORITA:それはないですね。僕も、全然接点はなかったですど、GLAY、X JAPANとは同じ時代を生き、ずっと走って来ていますから。そういう時代感、空気感だけですよね。そこさえあれば、あとは自ずと…と思っています。僕がもしそういう資料をガッツリ読み込んでいたら、撮り方が変わっていたと思いますね。
そこはあえて"沿い過ぎない"、というスタンスですね。さて、2日目の公演はWOWOWでの生放送がありました。OA済みのライブを再構築する際は、そうでない場合と比べて、心構えが違うものなのでしょうか?
MORITA:放送されているのを観ないのが一番いいんですよ。再放送用にスイッチングを直すため、僕は1回観てしまっているんですけれども、それを「抜け!」と(自分に)暗示を掛けて、とにかく冷静に俯瞰で見るのが大事でした。生放送は、僕も何度も仕事したことのある、野藁さんという方がスイッチャー(※9)をされていて。動物的にカメラを切り替えることのできる、すごく優秀な人なんです。でも、見落としている部分もいっぱいあるわけですからね。この作品がライブ映像のコンプリート版だ、と僕は思っています。
KUMAGAE:50カメ分というと、時間にすると何百時間もあるわけですよね。それをすべて吟味した上での再編集なので、生放送とはまったく違うものになっていると思います。
MORITA:再構成にあたり、「メンバーそれぞれがグッと来ている部分をどこで・どう出すか?」というのは、けっこう考えたポイントですね。ネタばれになるので「どの曲で」とは言いませんが、TAKUROさんが涙声でコーラスしているところとか、JIROさんの絶叫とか。そういった部分が"活きる"ために、じゃあそこまでどうやって(感情が)向かってきたのかな?と、時間を遡って考えて、編集をやり直したりもしました。「今この瞬間にグッと来ているから」と言って、その都度顔を映していては、肝心な場面が効かなくなってしまうので、かなり気を付けましたね。俯瞰で、客観的にとは言っても、それぞれのメンバーがグッと来ている場面に僕ももらい泣きしながら編集していましたよ(笑)。「いやあ、頑張って来たなぁ~!」とか言いながら(笑)。
(笑)。2日間の編集方針には、何か具体的な違いはあったのでしょうか?
MORITA:1日目よりは、2日目にお客さん(のカット)を多く入れた、というのはありますね。両日同じ曲があるので、「違いを出したいな」と思っていたのもあるし、2日目はやはり「やっとやりきれるぞ!」というような、メンバーから出て来る想いのようなものがあるじゃないですか? それは受け止めるお客さんの側にも、当然あるので。もちろん初日には初日ならではの感動があるし、どちらもいいんですけれども、2日目にお客さんのカットを少し多めに入れることで、トータルで観た時、2日間のよさがより伝わるんじゃないかな?と思いますね。
KUMAGAE:横浜アリーナ公演から、モビーカム(※10)というカメラを導入しているんですが。カメラマンがステージに登ってメンバーの近場で撮る、という臨場感を出そうとずっと試みていまして。
函館アリーナのこけら落とし公演時に、水兵さん姿のカメラマンさんが操っていたものですか?
KUMAGAE:あのカメラです。モビーカムがステージに登る曲は、1ステージにつき3、4曲ぐらいに絞っているんです。あまり多いと観ている方の気が散るので(笑)。横浜ではこの曲で登ったから、ドーム初日はこの曲、2日目はこの曲、と変化も付けているので、結果的に、映像の見え方も全然違うと思います。
MORITA:それは、優秀なテクニカル・ディレクターである角井さんのアイディアでもあったんですよ。彼がずっと"出し映像"(ライブ本番中、ステージ左右のスクリーンに映し出されている会場用の映像)を担当していて、GLAYのスタッフと一緒にチームでやっていたからこそ実現できた。僕がいきなり言ってできるものではないですから。
KUMAGAE:角井さんが撮影監督で、空海さんが監督、という体制でしたね。カメラの共有はもちろん、角井さんはツアークルーでもあるので、「ここで(メンバーが)こういうことをする」という情報を持っている。それを全部空海さんと共有してもらいつつ、「さらに、DVDになるからこういうふうに撮ってほしい」という意向も伝えて。ツアーを廻っているチームはやはり、客席遠方からでも見えやすいように、分かりやすく、顔を中心に撮るんですよね。でも、作品用の映像としては、全体の空気感を伝えないといけない。そこで、空海さんと連携してもらって、いろいろと揉んだ上で撮ってもらっていました。
これまで様々なアーティストの作品に携わってこられた森田さんですが、このたびライブ撮影・編集を終えられて、GLAYというバンドに対して一番強く思うのはどんなことでしょうか?
MORITA:ロックをやるっていうことに対して、突き詰めて本当に真っ直ぐなんだな、と思いましたね。それが一番美しい。亀田誠治さんが、「GLAYはもう既に日本のビートルズだ」というようなコメントをなさっていたのを読んだ記憶があるんですけど、まさにそう。日本のスタンダードであるべき存在だし、かつ、冒険心を忘れていないので、常に何かチャレンジしようとしている。その過程で、だいたいバンドというのは、メンバー同士の意見が衝突するもので…もちろん、GLAYにも衝突はあるはずだと思うんですが、その中できちんと、正しい方向に皆で持って行っている様子が、観ていて伝わってきますよね。そうでないと、本当に"仲がいい"あの空気は出ないと思うんです。すごいですね、本当に。
KUMAGAE:では最後に、今後のGLAYに期待することをお聞かせください。
MORITA:撮影に入る前に1回だけ、リハーサルスタジオで挨拶させてもらったんですけど、ノーメイクの彼らがものすごくカッコよかったんですよ。だから、いつかどこかで、ノーメイクでのライブをするとしたら、それもまた楽しみですね。年を重ねると、いつかそういう時が来ると思うので。あとは、健康かな。僕は今50歳なんですけど、あっという間に彼らも50になっていくだろうし、そうすると、いろんなガタが出てくると思うんですよ(笑)。そこをきっちりと乗り越えてほしいですよね。「解散しない」と言っているけど、一人病気してしまうと、やはり大変なことになってしまうわけだから。健康診断を欠かさずに、しっかりと栄養を摂ってほしいな、と思いますね(笑)。
※1:BLACK MONEY
JIROとHISASHIのツインボーカルによる未発表曲。「GLAY EXPO 2014 TOHOKU 20th Anniversary」にて初披露された。
※2:MUSIC LIFE
2014年11月5日発売
好評発売中
詳しくはコチラ
※3:RAIN
YOSHIKIがプロデュースした1994年5月25日リリースのデビューシングル表題曲。
※4:X JAPAN
日本のヴィジュアル系ロックバンド。1989年にX(エックス)としてメジャーデビューし、1992年にX JAPAN(※4)に改名。1997年9月22日に解散を発表し、同年12月31日に解散。2007年10月22日に再結成。
※5:軌跡の果て
1996年2月7日発売2ndアルバム『BEAT out!』収録曲。
※6:浮気なKISS ME GIRL
2014年11月5日発売13thアルバム『MUSIC LIFE』収録曲。
※7:GLAY EXPO 2014 TOHOKU 20th Anniversary
2014年9月20日(土)ひとめぼれスタジアム宮城で開催されたライブイベント。
※8:横浜アリーナ公演
GLAY ARENA TOUR 2014-2015 Miracle Music Hunt 2/8 横浜アリーナ
※9:スイッチャー
映像制作現場において、画面の切り換え操作を担当する人。
※10:モビーカム
ハイビジョン撮影が可能な小型・軽量ビデオカメラでグリップを持ちブレないよう撮影ができる機材。
■森田空海(もりた・くうかい)/演出業ほか。
1965年、大阪府出身。TV番組制作会社でキャリアをスタートし、1991年、スペースシャワーTVの開局2年目に移籍・上京。現在はフリーランス。ドラマや舞台、MV・ライブ映像・音楽番組などの演出を多数手掛ける。
ライブ作品の代表作に、『STARDUST REVUE オールキャストで大謝恩会』(DVD)、『由紀さおり & Pink Martini Japan Tour2012』(WOWOW)、『KYOSUKE HIMURO 25th Anniversary TOUR GREATEST ANTHOROGY -NAKED-FINAL DESTINATION DAY-01 & DAY-2』(DVD)などがある。
※公式HP
http://rehab1105start.wix.com/kookai-morita#!home/mainPage
――最初に、森田空海さんに監督をお願いすることになった経緯から教えていただけますか?
KUMAGAE:『GLAY EXPO 2014 TOHOKU 20th Anniversary(※7)』の際、WOWOWさんで生中継をすることが決まり、局のプロデューサーさんと話をしている時に、空海さんのお名前が挙がったのがきっかけです。その時に資料として観せていただいた作品がものすごく良くて、「是非ご一緒したい」と思ったのですが、EXPOはもう監督が決まっていたので、「次回のGLAYの作品で」となりました。当時は横浜アリーナ公演(※8)を単体の映像作品としてリリースする想定をしていまして、まずはそちらを撮っていただこう、と。それに先立ち、アリーナツアーを何公演も観に来ていただくことになったんです。
森田さんの映像のどんな部分に惹かれたのでしょうか?
KUMAGAE:言葉で説明するのは難しいのですが、荒々しさというか、ミュージシャンを撮るにあたってのスピード感のようなものが抜群でした。すごくカッコよく切り取ってくださる方だな、という印象がありました。
MORITA:ご一緒するのは今回が初めてですけど、僕の人生もGLAYが過ごして来た時代と共にありましたから。縁を感じて、お引き受けすることにしました。
KUMAGAE:本当に「はじめまして」からのスタートでした。
MORITA:はい。だから、「横浜アリーナ公演が試験みたいなもんや」と思っていたんです(笑)。
KUMAGAE:いえいえ(笑)。
実際にGLAYというバンドに向き合われて、どんな印象を受けられましたか?
MORITA:とにかく、めちゃくちゃ仲がいいですよね。それと、「解散しません」宣言をしたぐらいですから、根っから、本気の塊でずっと20年間続けてきたんだろうし、だからこそスタッフがたくさん付いてるし。横浜アリーナ公演を撮る前に、大阪や徳島、福井でのライブも観たんですが、どの会場も満席。立ち見で(お客さんが)ビッシリなんですよ。「これはすごいな!」と。こういう日本のバンドがきちんと存在しているんだな、と感じたし、これはますますヘタなことはできんぞ、とも思いました。
撮り方、コンセプトはどのように決められたのですか?
MORITA:先ほど熊谷さんからもお話があったように、当初、横浜アリーナ公演を単体の作品として出す計画もあったので、たくさんのカメラ台数の撮影プランをまずは一度プレゼンしたんですけれども、その後減らした、という経緯があるんですね。減った状況の中でどうするか?と考えた時、横浜アリーナ公演をいかにも「横浜アリーナです!」という(大会場らしい)撮り方をするのではなくて、ライブハウスのような感じで撮りたいな、と思ったんです。台数が少ない分、手持ちカメラにして、振り回して。そのため、想いのほか乱暴な映像になったので、最初は「そこまでやるか!」と、かなりビックリされたと思うんですけど(笑)。
KUMAGAE:(笑)。空海さんの作品を最初に観た時、その荒々しさが良かったので、「ハンディーカメラをたくさん入れる」と聞いた時も、「いいじゃないですか?」と思ったんです。でも、最終的に図面を見た時に、「あれ? ここまで極端に入れ替える…?」と驚きました(笑)。でも、ファンの方はご存知のごとく、僕らはこれまで既にたくさんのライブ映像作品をつくってきていて、同じことやるのはまったく面白くないので、懸けてみよう、チャレンジしよう、と。結果的に、東京ドーム公演の映像との差別化ができましたし、良かったです。
MORITA:そうですね、たしかに。
東京ドーム公演は、GLAYにとってもファンの方々にとっても特別な意味のある公演でしたが、そういったライブを撮られるにあたり、いちばん心掛けたことは何ですか?
MORITA:撮らせていただいたのは本当に光栄なことですが、"GLAYの20周年"という部分に自分が沿い過ぎてしまって、のめり込んでしまうとダメだ、とも思っていたんです。これはどのライブでもそうなんですが、僕は基本的にあまりアーティストの"ファン"にならないようにしています。俯瞰で客観的に観て、ファンの方はもちろん、それ以外のより多くの方も観られる作品にしなければいけない、と思っているので、その姿勢はどのライブでも崩したくない。その中で、20周年という華々しい、いわば目的地点をどう押さえていくのか?ということですね。それと僕は、ライブは"ありのまま"が一番だと思ってるんですよ。でも、ありのままをそのまま見せたいんだったら、今は解像度のいいカメラがいくらでもあるので、1台でいいじゃないですか?
しかし、そういうありのままではなくて、例えば、ギターを弾く手元だったり、顔のアップだったり、そういったアングルなどを駆使して、会場では観られない映像を組み立て直し、本当のありのままにどれだけ近付けて行けるか。そこがライブ映像の演出の醍醐味だと思っているので、ブレないように心掛けて。編集している時はのめり込みますが、何度も何度も"上から"、ドーンと構えて冷静に観る自分に戻るようにしています。その感覚を編集中ずっとキープするのが僕の仕事。でも、今回は3つのライブで全70曲以上、とアイテム数がものすごく多かったので(笑)、それが一番大変でした。
メンバーから、撮影に対するリクエストはあったのですか?
KUMAGAE:毎回違う撮影を試みる中で撮影済みの映像を観て「この撮り方は、効果的では無いので次回からは辞めましょう」といった意見などありました。例えば今回、東京ドームで初めてフライングモンタ(空中特殊撮影機材。サッカーのワールドカップや映画などで活用されている)を導入したんですね。4点吊りでケーブルを引っ張って操作し、変幻自在に動けるカメラでして、ステージに向かってスーッと近づいていくようなダイナミックな撮影が可能になりました。観ていて「気持ちいい!」と感じていただけると思うので、ご覧になった方には是非その箇所を見つけていただきたいな、と思います。
MORITA:初日の「浮気なKISS ME GIRL(※6)」で、2つのデベソ(アリーナにせり出した花道)にメンバーが出て来たところをカメラが真上でグルッと回って撮っているんですが、そこが一番(フライングモンタの映像を)長く使っているカットです。あんなの、普通のカメラでは撮れないですからね。
KUMAGAE:そうですよね。今回、台数を減らした横浜アリーナ公演でもカメラ30台、東京ドームは何台入れたんでしたっけ…?
MORITA:ええと、ザクッと数えても50台ずつです。通常のドーム公演の台数を考えると、多いと思います。編集はやはり、そのために時間が掛かりましたね。横浜のライブの最初のバージョンの編集がだいたい1週間から10日でできたんですけど、東京ドームはそれぞれ2週間越えで、15、16日ぐらいずつ掛かりました。
KUMAGAE:カメラ素材から、空海さんの思うベストの方向に引っ張っていくわけですからね。 編集はすごく長い道のりですね。
MORITA:横浜、ドームのDAY1、DAY2で、同じ曲をやっていても同じように見えるのは僕の職業倫理上絶対にダメなので、全部違うものにしたい、というのはまずありましたしね。それと、できるだけ何回も観てほしいし、飽きの来ないものにしたかった。50カメもあると、方法論は100億通りほどあると思うんですよ。アングルだけではなく、使う秒数が違っても変わってきますし。でも、正しい答えは5つぐらいや、と僕は思うんです。早い段階で1つに絞り込まないほうが良くて。そして、さらにひとつを目指すのではなく、3つに入るぐらいを目指して、徐々に突き詰めていく。それが今回もできたし、僕らの正しい仕事なのかな?と思います。
KUMAGAE:東京ドームほどの大きさになると、メンバー全員がずっとアクションをしているので、(カメラで)追うのも大変も大変とは思うんです。例えば、ここでHISASHIが手を挙げていたけど、同じ場面ではJIROもジャンプしてるなど。ですので僕らも現場で起きたことを必死で思い出しつつやるんですが、「でも、この場面を切り取ってないということは、空海さん、こっちを推したんだ」というのも推し量って。そういう組み立ては本当に難しいな、と痛感しました。
MORITA:同時進行でいろんなことが起きりますからね。だから、いくらここでTERUがカッコよくても、あえてTERUに行かず、TAKUROに行く。その心は、その何秒後か、あるいは数十分後かに、もっとカッコいいTERUが出て来るから。そのためにここではあえてTERUを見せない。そういうやり方があるんですよね。編集って、切ったものを「素材を捨てる」と言うじゃないですか? でも捨ててはいないんですよ。僕の場合は「含む」という考え方なんです。後々、切った映像よりもカッコいいTERUを見せる、という組み立て方ですよね。
今回、森田さんがいちばん苦労された曲というと何でしょうか?
MORITA:曲としてはやっぱり「BLACK MONEY(※1)」。一番時間が掛かったんですよねぇ…。いわゆるパンクな曲じゃないですか? でも、JIROとHISASHIがけっこう接近するので、(2人の間にカメラが割って入れないため)非常に撮りにくい、という技術的な問題がまず一つ。それに、最初は激しく始まるんだけどもすぐに歌い出して、それ以降は人物的にはさほど動かない。歌詞の文言やサウンドは過激なんですけれどもね。かつ、あの曲の空気感とビートを出すために、1回ある編集プランを提案したら、「もっと激しくお願いします」と。だから、「いいんですか?」ということで本当に無茶苦茶やったら、「ちょっとやりすぎです」と返って来まして(笑)。
KUMAGAE:ははは!
MORITA:その駆け引きを繰り返す中で、気が付けばものすごく時間が経っていて。すごく短い曲やのに(笑)。結局、30時間ぐらい掛かりましたよね?
KUMAGAE:ご尽力、有難うございます。
MORITA:僕、「好きにやってください」と言われると、リミッターが外れるタイプなので(笑)。
KUMAGAE:横浜アリーナ公演でお仕事をご一緒した時に、それは分かりました(笑)。でも、最終的にはめちゃくちゃカッコよく仕上ったので、「BLACK MONEY(※1)」には是非注目していただきたいです。
では、森田さんにとって一番グッと来た、涙腺が決壊するポイントはどこでしたか?
MORITA:「軌跡の果て(※5)」と、最終日の「MUSIC LIFE(※2)」かな。特に「軌跡の果て」は、初日と2日目を観比べていただきたいですね。連続で観ていただくと、より感動が深まると思います。それと、冒頭でメンバーが出て来てファンの方たちが狂喜する場面。ああいうのを観ても、僕、やられてしまうんですよね。
KUMAGAE:歓声がものすごく大きかったですしね。
待っていた皆さんの熱がひしひしと伝わってくる、大変エモーショナルなオープニングでした。
MORITA:ライブ編集は、オープニングから最初のMCが入るまでが肝なんですよ。「よし、続けて最後まで観よう」とか、「もう一回、巻き戻して観よう」とかいう気にさせる、いわゆる掴みですよね。そこを外してしまうとダメなので、そのセクションをガッチリ固めるまでに、かなり時間を掛けました。最終的に、泣いたり感動したり、「カッコいい!」とか「会場にいるみたい」と思わせたいわけなので、そこに対して"正しい入り口"になってるかどうか?ということですね。だから、すごいカメラワークを小出しにして見せたり、僕の編集の味を出したり。例えば、横浜アリーナ公演の冒頭には、(カメラを)振り回しているカットをちょっと入れたりして、「今回はこれで行きますよ」と示す、ということですね。
冒頭でスタイルを"宣誓"して惹き込む、ということでしょうか?
MORITA:そうですね。それが僕の狙いですし、そうあるべきだと思ってます。
2日目、デビュー曲「RAIN(※3)」でYOSHIKIさんが登場される場面はハイライトでしたが、どんなことに気を配られましたか?
MORITA:GLAYにとっての原点で、思い入れが一番ある曲でしょうから、神妙に撮っていましたね。メンバーもずっと、感極まっていましたから。実際、現地でのリハーサルは1回ありましたが、ほぼ一発本番みたいな気持ちでカメラマン、スタッフは撮っていました。
恩人であるYOSHIKIさんとGLAYの歩みについては、事前に資料をご覧になってから撮影に臨まれたのですか?
MORITA:それはないですね。僕も、全然接点はなかったですど、GLAY、X JAPANとは同じ時代を生き、ずっと走って来ていますから。そういう時代感、空気感だけですよね。そこさえあれば、あとは自ずと…と思っています。僕がもしそういう資料をガッツリ読み込んでいたら、撮り方が変わっていたと思いますね。
そこはあえて"沿い過ぎない"、というスタンスですね。さて、2日目の公演はWOWOWでの生放送がありました。OA済みのライブを再構築する際は、そうでない場合と比べて、心構えが違うものなのでしょうか?
MORITA:放送されているのを観ないのが一番いいんですよ。再放送用にスイッチングを直すため、僕は1回観てしまっているんですけれども、それを「抜け!」と(自分に)暗示を掛けて、とにかく冷静に俯瞰で見るのが大事でした。生放送は、僕も何度も仕事したことのある、野藁さんという方がスイッチャー(※9)をされていて。動物的にカメラを切り替えることのできる、すごく優秀な人なんです。でも、見落としている部分もいっぱいあるわけですからね。この作品がライブ映像のコンプリート版だ、と僕は思っています。
KUMAGAE:50カメ分というと、時間にすると何百時間もあるわけですよね。それをすべて吟味した上での再編集なので、生放送とはまったく違うものになっていると思います。
MORITA:再構成にあたり、「メンバーそれぞれがグッと来ている部分をどこで・どう出すか?」というのは、けっこう考えたポイントですね。ネタばれになるので「どの曲で」とは言いませんが、TAKUROさんが涙声でコーラスしているところとか、JIROさんの絶叫とか。そういった部分が"活きる"ために、じゃあそこまでどうやって(感情が)向かってきたのかな?と、時間を遡って考えて、編集をやり直したりもしました。「今この瞬間にグッと来ているから」と言って、その都度顔を映していては、肝心な場面が効かなくなってしまうので、かなり気を付けましたね。俯瞰で、客観的にとは言っても、それぞれのメンバーがグッと来ている場面に僕ももらい泣きしながら編集していましたよ(笑)。「いやあ、頑張って来たなぁ~!」とか言いながら(笑)。
(笑)。2日間の編集方針には、何か具体的な違いはあったのでしょうか?
MORITA:1日目よりは、2日目にお客さん(のカット)を多く入れた、というのはありますね。両日同じ曲があるので、「違いを出したいな」と思っていたのもあるし、2日目はやはり「やっとやりきれるぞ!」というような、メンバーから出て来る想いのようなものがあるじゃないですか? それは受け止めるお客さんの側にも、当然あるので。もちろん初日には初日ならではの感動があるし、どちらもいいんですけれども、2日目にお客さんのカットを少し多めに入れることで、トータルで観た時、2日間のよさがより伝わるんじゃないかな?と思いますね。
KUMAGAE:横浜アリーナ公演から、モビーカム(※10)というカメラを導入しているんですが。カメラマンがステージに登ってメンバーの近場で撮る、という臨場感を出そうとずっと試みていまして。
函館アリーナのこけら落とし公演時に、水兵さん姿のカメラマンさんが操っていたものですか?
KUMAGAE:あのカメラです。モビーカムがステージに登る曲は、1ステージにつき3、4曲ぐらいに絞っているんです。あまり多いと観ている方の気が散るので(笑)。横浜ではこの曲で登ったから、ドーム初日はこの曲、2日目はこの曲、と変化も付けているので、結果的に、映像の見え方も全然違うと思います。
MORITA:それは、優秀なテクニカル・ディレクターである角井さんのアイディアでもあったんですよ。彼がずっと"出し映像"(ライブ本番中、ステージ左右のスクリーンに映し出されている会場用の映像)を担当していて、GLAYのスタッフと一緒にチームでやっていたからこそ実現できた。僕がいきなり言ってできるものではないですから。
KUMAGAE:角井さんが撮影監督で、空海さんが監督、という体制でしたね。カメラの共有はもちろん、角井さんはツアークルーでもあるので、「ここで(メンバーが)こういうことをする」という情報を持っている。それを全部空海さんと共有してもらいつつ、「さらに、DVDになるからこういうふうに撮ってほしい」という意向も伝えて。ツアーを廻っているチームはやはり、客席遠方からでも見えやすいように、分かりやすく、顔を中心に撮るんですよね。でも、作品用の映像としては、全体の空気感を伝えないといけない。そこで、空海さんと連携してもらって、いろいろと揉んだ上で撮ってもらっていました。
これまで様々なアーティストの作品に携わってこられた森田さんですが、このたびライブ撮影・編集を終えられて、GLAYというバンドに対して一番強く思うのはどんなことでしょうか?
MORITA:ロックをやるっていうことに対して、突き詰めて本当に真っ直ぐなんだな、と思いましたね。それが一番美しい。亀田誠治さんが、「GLAYはもう既に日本のビートルズだ」というようなコメントをなさっていたのを読んだ記憶があるんですけど、まさにそう。日本のスタンダードであるべき存在だし、かつ、冒険心を忘れていないので、常に何かチャレンジしようとしている。その過程で、だいたいバンドというのは、メンバー同士の意見が衝突するもので…もちろん、GLAYにも衝突はあるはずだと思うんですが、その中できちんと、正しい方向に皆で持って行っている様子が、観ていて伝わってきますよね。そうでないと、本当に"仲がいい"あの空気は出ないと思うんです。すごいですね、本当に。
KUMAGAE:では最後に、今後のGLAYに期待することをお聞かせください。
MORITA:撮影に入る前に1回だけ、リハーサルスタジオで挨拶させてもらったんですけど、ノーメイクの彼らがものすごくカッコよかったんですよ。だから、いつかどこかで、ノーメイクでのライブをするとしたら、それもまた楽しみですね。年を重ねると、いつかそういう時が来ると思うので。あとは、健康かな。僕は今50歳なんですけど、あっという間に彼らも50になっていくだろうし、そうすると、いろんなガタが出てくると思うんですよ(笑)。そこをきっちりと乗り越えてほしいですよね。「解散しない」と言っているけど、一人病気してしまうと、やはり大変なことになってしまうわけだから。健康診断を欠かさずに、しっかりと栄養を摂ってほしいな、と思いますね(笑)。
※1:BLACK MONEY
JIROとHISASHIのツインボーカルによる未発表曲。「GLAY EXPO 2014 TOHOKU 20th Anniversary」にて初披露された。
※2:MUSIC LIFE
2014年11月5日発売
好評発売中
詳しくはコチラ
※3:RAIN
YOSHIKIがプロデュースした1994年5月25日リリースのデビューシングル表題曲。
※4:X JAPAN
日本のヴィジュアル系ロックバンド。1989年にX(エックス)としてメジャーデビューし、1992年にX JAPAN(※4)に改名。1997年9月22日に解散を発表し、同年12月31日に解散。2007年10月22日に再結成。
※5:軌跡の果て
1996年2月7日発売2ndアルバム『BEAT out!』収録曲。
※6:浮気なKISS ME GIRL
2014年11月5日発売13thアルバム『MUSIC LIFE』収録曲。
※7:GLAY EXPO 2014 TOHOKU 20th Anniversary
2014年9月20日(土)ひとめぼれスタジアム宮城で開催されたライブイベント。
※8:横浜アリーナ公演
GLAY ARENA TOUR 2014-2015 Miracle Music Hunt 2/8 横浜アリーナ
※9:スイッチャー
映像制作現場において、画面の切り換え操作を担当する人。
※10:モビーカム
ハイビジョン撮影が可能な小型・軽量ビデオカメラでグリップを持ちブレないよう撮影ができる機材。