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Vol.67 TERU WEBインタビュー

最初から「あなた」は平仮名ではない不思議な感覚があって、歌い方を変えた。
結婚式のイメージが広がり、“家族”の画が見えて、優しい結婚ソングにしたかった

「あなたといきてゆく」(※1)は、当初はアルバム『SUMMERDELICS』(※2)に収録される予定だったそうですね。

TERU:そうなんです。『SUMMERDELICS』というタイトルになったのは「あなたといきてゆく」が外れた時に、夏を楽しもうという雰囲気になったからだと思います。<年が明 けたら結婚しようよ>って夏に歌われてもなって(笑)。

最初にこの曲を聴いた時はどんな感想を持ちました?

TERU:随分シンプルな曲を書いてきたなって思ったのと、いつもはいわゆるコンポーザーとしてのテクニックをどこかしらに入れ込んでくるのですが、今回はそういうものを入れずに、本当にギター一本で歌えるシンプルなバラードを作ってきたなという印象でした。

最初に聴いた感じと、レコーディングで歌った時の感じは違いましたか?

TERU:最初に歌詞をもらった時は「あなた」の部分が全部平仮名でした。完成した時はそれぞれの「あなた」が漢字になっていましたが、その時にそういう事を歌っているんだって気づきました。

TAKUROさんはTERUさんの歌を聴いて、こういう曲にしなければいけないんだと気づいたと言っていました。

TERU:それが不思議で、僕もなぜあんなに優しく歌ったかというと、平仮名の「あなた」が第一印象ではなかったからなんです。普通だったらファルセットにしているところを地声で歌ったり、キーの高さ的には大丈夫だったのにファルセットを使いたくなったり。「あなた」が全部平仮名だったので、自分の中で「あなた」という人達を探して歌ったりして。僕の場合、ステージで歌うというのが大前提としてあるので、レコーディングの時、ライヴの景色が見えてきたり、誰に歌おうって探すんです。で、今回はファンの人達、それから結婚するファンの人がいたら、この曲を聴いて結婚式で使いたいと思ってくれたり、そういう曲になってくれたらいいなと思って歌いました。結婚式、披露宴にはお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんがいると思うので、優しい歌が欲しいな、優しく包み込むような歌にしたいなと思ったのは、やっぱり結婚式場の雰囲気が出てきたのかもしれないですね。

「ずっと2人で…」(※3)に続く名ウェディングソングの誕生ですね。

TERU:うちの姉の結婚式ですよね……でも「ずっと2人で…」は意識していませんでしたが、結果的に影響されているのかもしれないですね。やっぱり<年が明けたら結婚しようよ>というひと言が頭にあるので、どうしても結婚式を思い浮かべますよね。

「ずっと2人で…」は95年の作品ですが、この時のTERUさんのボーカルはいい意味で粗削りで初々しかったですよね。

TERU:当時の僕は粗削りというよりも、あれが精一杯でした(笑)。そうなんですよ、でもそこがいいんですよね、今聴くと。「HOWEVER」(※4)もそうなんですけど、いまあの歌をあの感じで歌えと言われても歌えないんですよ。ガムシャラに歌えないというか。

アルバム『SUMMERDELICS』についてのインタビューの時も、TERUさんは「ガムシャラに音楽に向き合えるかどうかが、自分にとって大きな問題だ」と言っていました。

TERU:そういうのもあって、『SUMMERDELICS』は、ガムシャラに頑張りました(笑)。若い人達に負けたくないという思いのガムシャラ(笑)。いい大人がなかなかガムシャラになれないというか、全部取っ払ってやるという意識を持ってやらないとそこに向かえないので、「聖者のいない町」(※5)でのハイトーン部分だったり、逆に狙って自分の限界ギリギリのところに自分を追い込んでいかないと、そういうのが出ないので、わざと自分を追い込んでああいう声を出しました。自分を追い込むガムシャラです(笑)。

「あなたといきてゆく」は春に行った『GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2017 Never Ending Supernova』(※6)で、すでに披露していましたが、ファンの反応はいかがでしたか?

TERU:曲に入る前のMCで、結婚の事をほのめかしたり、愛情についての話をして歌い始めていたので、お客さんはそういう曲、新しいバラードが聴けるんだと思っていたと思います。

いわゆるGLAYらしいというか強くて優しいバラードで、ファンの方はこういう曲を聴きたいと思っているんだろうなと思います。

TERU:2月にレコーディングして、本当は歌い直す予定だったのですが、結局やっていなくて、でもこのテイクがすごくよくて。ツアーを回りながら、ファンの人達の顔を見ながら歌っていると、これ以上のものないなと思って。一番最初に「あなた」っていう言葉を勘違いして歌っている事が全てで、その後、歌詞は変わっていますが、変わった歌詞で歌っていたらまた違う感じになっていると思いました。

『SUMMERDELICS』というアルバムをライヴで披露して、改めてこの作品について、今回のツアーについて、思うところはありますか?

TERU:半分くらいはシングルとしてリリースしている事もあって、聴き込んで来てくれる人もいますし、「SUMMERDELICS」や「シン・ゾンビ」(※7)に関しては、演出が多すぎて(笑)。シンプルに楽曲を聴いてもらうというよりはアレンジ、構成の面白さや、HISASHIがいきなり色々な事を始めたり演出が面白いので、CDに感じていた感覚とは変わりましたね。映像もアニメとコラボして、より楽しく曲をみんなで共有できるようになったり、ちょっとしたフリができるようになったり、会場全体が楽しい雰囲気になっています。

アルバムに詰まっている楽しさやHISASHIさんワールドが、このライヴではしっかり表現できていますよね。

TERU:ライヴで今後成長するだろうなって思ったのは「聖者のいない町」ですね。あれはCDよりも、ライヴの方が圧倒的にいいです。想定外のスケール感でしたね。70年代のロックを彷彿させるマニアックな感じの曲なので、渋い感じで終わるのかなと思っていたのですが、映像監督の感性で、サイケデリックな世界にどんどん持っていかれて、僕らの衣装もその世界に引っ張られて 不思議な世界になりましたね。

GLAYらしさも斬新さも感じる『SUMMERDELICS』というアルバムを発売して、やはりバンドとしてさらに前に進むことができた実感はありますか?

TERU:よく考える事なんですけど、4人がそれぞれの役割で、GLAYというものの調理方法を知っているだなと思いました。塩加減、胡椒の加減、砂糖の加減みたいなものをちゃんとわかっていて、ちょっと濃すぎる料理には スパイスを入れれば美味しいよねっていうHISASHIのスパイスの塩梅があったり、そういうさじ加減をみんなわかってきているんだなと思います。

それがまさに武器であり、強みですよね。

TERU:そうですね。「聖者のいない町」とかは、洋楽っぽくしようと思ったらもっと洋楽テイストになっていたけど、でも4人のアプローチの仕方がそれぞれ違うのでそうならなかった。70年代を意識しているのはTAKUROで、ギターソロもそうですけど、同じギターでもHISASHIはそのフレーズを違うコードに当てたら、サイケというよりもEDM系の曲になってもおかしくないくらいのアプローチでやっているし。JIROのベースに関してもすごくロックではあるけれども、70年代の香りはしないし、それぞれの個性が絶妙のバランスで折り合って、GLAYになっているんですよね。

アルバムのインタビューの時「シン・ゾンビ」は「一体何を歌っているのかいまだにわからない」とおっしゃっていましたが、改めてライヴで歌ってみて、いかがですか?

TERU:あの曲はやっと理解できました(笑)。HISASHIが何を言いたいのか、やっとわかってきましたね。時代に物申すじゃないですけど、何かに対してのアンチテーゼとして受け止めています。

どちからいうとトリッキーなアルバムを出して、そのツアーをやっている時に“王道”といわれるシングルを発売するというのは、やはりファンの事を考えての事なのでしょうか?

TERU:そういうところはやっぱりTAKUROがすごいなと思うところです。安心感というものをこのタイミングで提供していくことによって、「GLAYどこ行くんだろう」って不安になっている人達に対して、GLAYはどこにも行きませんよ、これ聴いてください、ちゃんとわかってますよ、というアプローチができる凄さ。TAKUROも言っていましたけど、HISASHのシングルがきて、JIROのシングルがきて、僕のシングルがあって、そこで久々にTAKUROのメロディがくると、手作りの温かいおにぎりとお味噌汁ってやっぱり美味しいよねって感じですよね(笑)。

TAKUROさんのメロディを長年歌っていると、TERUさんの中ではやはり“安心”する部分が大きいですか?

TERU:そこはやっぱり他の2人の楽曲を歌ってみて気づくことなんですけど、HISASHIとJIROはコードに対して、どちらかというと洋楽のアプローチで作っていく傾向がありますが、TAKUROの場合はJポップのラインを取っていくんです。そこはすごくわかりやすくて。だからTAKUROの曲は初めて聴く曲も、コードの行き先が大体想像できるので安心できるというか、シンプルな塩おにぎりとシンプルなお味噌汁みたいな感じ(笑)。エスニックでもなければイタリアンでもない(笑)。


ツアーも後半戦に突入して、来年は台湾公演(※8)もありますが、TERUさんはライヴで「GLAYは来年も止まらない」って言っていました。来年は何を見せてくれるのでしょうか?


TERU:まだ詳細は言えませんが、やる事が決まっているうえでの発言です。もう場所も押さえています(笑)。


昔からファンの前で言ったことはちゃんと守る律儀なバンドです。


TERU:目標はバンド内だけで抱えるよりも、ファンの人達と共有した方が楽しいと思っています。2013年にやった地元・函館の野外でライヴ『GLAY Special Live 2013 in HAKODATE GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.1」(※9)の時、2日目が豪雨でファンの人につらい思いをさせてしまったので、そのリベンジもいつかやりたいとずっと思っています。


今回のツアーのラスト2公演は12/23・24“HAKODATE WINTTERDELICS”(※10)として函館アリーナで行われますね。


TERU:今は函館アリーナという会場もできたので、天候を心配しなくてもよくなりました。函館を盛り上げるという気持ちも強いのですが、それ以前に野外でも屋内でも、自分たちが生まれ育った場所でやりたいというシンプルな思いです。


「あなたといきてゆく」も、函館の風景を思い出してしまいます。


TERU:やっぱりそういうところにかえるというか、バラードに関しては余計そうかもしれません。20代は函館にあまり帰らなくても気にもならなかったのですが、30代、そして40代になって、自分の両親が年を取ってきたからという事もあると思いますが、少しでも一緒にいてあげたいなと思ったり。両親が函館が大好きなので、函館で過ごすことで幼少時代の思い出が蘇ってきたり、この年になって父親と2人きりで釣りに行ったり、そういう経験をすることで、またそれが音楽に返ってくるんじゃないかと思っています。ファンの人達が、函館はGLAYの聖地だと言ってくれて、ライヴ以外でも遊びに行って、その景色を観ながらGLAYの曲を聴くという事をやってくれているみたいなんです。僕達の原風景というか、函館の景色の中で「Winter,again」(※11)を聴いた時のしっくり感とか、「ずっと2人で…」も「あなたといきてゆく」もそうですけど、バラードは函館の景色を観ながら聴くと、より一層深く歌詞を理解してもらえると思います。


さて『SUMMERDELICS』の次、GLAYはどこに行くのでしょうか?


TERU:まだ次のアルバムが全然想像できないですね。HISASHIがいくとこまでいっちゃったので(笑)、若いミュージシャンから「音楽って自由なんだってあれで思いました」って言われました(笑)。だから「そうだろ、自由なんだよ。誰が「太鼓の達人」入れちゃダメだって言った?」って返しました。 HISASHIすげえなぁって盛り上がりました(笑)。


これからのGLAYがますます楽しみになりました。


TERU:自由になってきましたからね。それと時代がすごく面白くなってきているのかもしれないですね。カテゴリーを作らないというか、これやっちゃいけないというのが、どんどんなくなってきている気がします。音楽業界も何かが変わろうとしている感じがしています。

※1:「あなたといきてゆく」
2017年11月22日リリースのシングル「WINETRDELICS.EP~あなたといきてゆく~」収録の表題曲。TAKURO作詞・作曲による壮大なバラード。

※2:『SUMMERDELICS』
前作より2年8ヶ月ぶりとなるGLAYにとって14枚目のオリジナルアルバム。2017年7月12日(水)発売。7月24日付けオリコン週間CDアルバムランキングで1位を獲得した。CD Only盤、CD+2DVD盤、5CD+3Blue-ray+グッズ盤(初回生産限定・豪華BOX仕様のG-DIRECT限定Special Edition)の3つのバージョンが発売された。

※3:「ずっと2人で…」
TERUの姉の結婚式のためにTAKUROが書き下ろしたバラード。1995年3月1日発売の1stアルバム「SPEED POP」収録。同年5月、5thシングル「ずっと2人で…/GONE WITH THE WIND」としてリリースされた。

※4:「HOWEVER」
1997年8月6日リリース、12thシングルにしてGLAYにとっては初のミリオンセラーとなった代表曲。

※5:「聖者のいない町」
2017年7月12日リリースのアルバム『SUMMERDELICS』収録のロックゴスペルナンバー。BSテレビ局・Dlife(ディーライフ)にて放送される『マクガイバー』エンディング曲。

※6:『GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2017 Never Ending Supernova』
2017年4月14日(金)島根県芸術文化センター「グラントワ」から5月25日(木)石川・金沢歌劇座で行われた追加公演まで、全10都市14公演(振替公演も含む)で開催されたホールツアー。

※7:「SUMMERDELICS」や「シン・ゾンビ」
ともにアルバム『SUMMERDELICS』収録。アリーナツアー「SUMMERDELICS」でも演奏されている。

※8:台湾公演
2018年3月17日、台北アリーナで開催される「GLAY ARENA TOUR 2018 “SPRINGDELICS” in Taipei」のこと。

※9:『GLAY Special Live 2013 in HAKODATE GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.1』
函館・緑の島野外特設ステージで2013年7月27日・28日に開催された函館史上最大規模の野外ライブ。2日目はライブ途中から豪雨となった。

※10:“HAKODATE WINTTERDELICS”
アリーナツアー「SUMMERDELICS」の後、2017年12月23日・24日に函館アリーナ2daysで開催される。

※11:「Winter,again」
1999年2月3日リリース、GLAYの16thシングル。GLAY史上最大のヒット(165万枚)を記録した第41回日本レコード大賞受賞作品。