Vol.64 アリーナツアー開幕直前 WEBインタビュー
9月23日(土・祝)に朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンターで幕を開ける【GLAY ARENA TOUR 2017“SUMMERDELICS”】(※1)。リハーサルの折り返し地点を迎えた9月某日、衣装合わせのため通常より早くスタジオに集まったメンバーを順に直撃。以下3つの共通質問を投げ掛け、それぞれの視点で語られたコメントから、アリーナツアーの行方を探る!
①リハーサル中盤ですが、雰囲気・仕上がりは現状いかがですか?
②“GLAY史上、最も〇〇なツアーになる!” その理由は?
③観に来られる方々へ向けて、一言メッセージをお願いします。
■TERU
①リハーサルはもう中盤になるので、今ステージに立っても通しでちゃんとできる仕上がり具合だと思います。久々に歌う曲もありますけど体に染み込んでいるみたいで、2、3回合わせるともう全部蘇ってくる、というか。だから、頭に入らないのはむしろ新曲のほうですね。「彼女はゾンビ」(※2)をずっと歌ってきているので、一回ゼロに戻して「シン・ゾンビ」(※3)にするのが大変です(笑)。演出上、自分たちが動いてどうこうする、という決めごとは今回ないので、その立ち位置を意識してリハする、というのも全くなくて。今回は映像をいかにして皆に楽しんでもらうか?というのが、新たに挑戦するGLAYのエンターテインメント。協力してくれる映像チームの人たちともガッチリお互いの意志をぶつけ合い、やり取りをしながら今準備を進めているので、本番には間に合うと思います。
②“GLAY史上、最もハチャメチャなツアー”になるんじゃないですかね? オープニングからエンディングまで、世界観が全く違うんですよ。映像の雰囲気もその都度違うし、メンバーそれぞれの個性が出たものになるんじゃないかな? これまで、HISASHIが自分の曲に入る前の映像を自分の世界観でつくる、という形はあったんですけど、今回は、HISASHIの持っている僕らにはない感性をGLAY全体に活かすことのできる演出・映像が多いので、僕としても楽しみです。僕は今回、「センターステージで、一人で歌いたい」という要望を今までになく伝えたんですよ。YUKI(※4)ちゃんのライヴを函館で観て影響を受けたところがあったからなんですけど、それがどういう形でどう皆さんに楽しんでもらえるかは、ライヴに来てからのお楽しみ…ということで!
今回はGLAYの4人がこのアリーナツアーに対してすごく強く想いを寄せてるなぁと感じますね。久々のアリーナツアーだし、その間にいろいろなものを吸収してきたんだろうな、というのが皆の言動から窺えるんです。20周年を無事に終えられて、ちょっとした心の余裕ができたのもあるでしょうね。「じゃあ、今度は自分たちが楽しめることをやっていこう」みたいな。いろんな人たちに受け入れられるものをつくるには、やっぱり客観的に見てもらって、その分野を専門とするトップの方たちの意見を聞くのが大事だと思っていましたけど、今後30周年に向かう時に、より自分たちが楽しめて、飽きずに「もう一度やりたい!」と思えるような…そんな空間をつくっていかなければいけない、と思うんです。今回のアリーナツアーは、そういう意味ですごくいいスタートを切れている気がします。
③It's a small world(※5)という言葉がありますけども、今回のツアーはIt's a HISASHI world(笑)。何が飛び出すか分からないですが、HISASHIの世界観を楽しんでほしいですね。まぁ、きっといろんな意見が出てくるとは思うんですけど(笑)、それも楽しんでいきたいな、と。ネタバレに気を付けて、ファンクラブの会報などに感想を送ってくれたらうれしいです!
■TAKURO
①メンバーからのアイディアがたくさん出ていて、それを一つずつ磨く1週間だったかな。TERUは日々イヤモニ(※6)と格闘してますよ。実は、ある曲の歌メロが違ってるんだけど、いつ言おう、いつ言おう…と思ってもう1週間(笑)。曲に入る前に「1回だけ聴いていい?」(TERU)というのを最初2曲ぐらい許したんだけど、待つのが嫌で3曲目からは「ダメ!」と(笑)。そこも含め、彼はきっと本番でうまく調整するんじゃないですかね? JIROはアレンジ面でもいろいろとアイディアをたくさん出してきて、本当にすごいですよ。HISASHIについては、アイツのやることは本番まで内容を知らないことがこれまでもあったんだけど、今回はそれがすげぇある(笑)。「お前、それいつ録ったんだ?」っていう効果音がいきなり入っていたり。演奏はロボ級に完璧だけどね。
演出面で言えば、それぞれが今まで「次のアリーナツアーではこれをやろう」と溜めてたのかな?と思うほど、各界の才能ある人たちとの連携を含め、たくさん準備していたみたいで。この段階で、俺もまだ観たことのない映像モノがいっぱいあるよ(笑)。もう、「好きにして!」しか言わないね。2日間公演で5、6曲変わるから、トータル30曲以上あるので、リハがGLAYには珍しく夕方6時近くなるんだよね。久しぶりに大鉈を振るうというか、大物、重鎮の曲たちが今回ちょっと顔を出すんですよ。‘90年代の曲は長いから自ずとライヴが長くなるし、前後の余韻も含めると結構ボリュームあるかな。でも、そういうのをちょっと今回はやりたかった。ホールツアーを経て、その前がアルバム『MUSIC LIFE』(※7)を引っ提げた『Miracle Music Hunt』(※8)で、エンターテインメント寄りだったし。今回はもう少しメッセージ優先の方向性で行きたかったんだよね。
②“GLAY史上、最もHISASHIの才能が渋滞してるツアー”なんじゃないかな? 今のNY並みの大渋滞! たかが10ブロック進むのに30分ぐらい掛かった。異常だよね…と、NY帰りの俺らしい表現をしてみましたが。通常ならば事前に「こんな感じ」とだいたいイメージはつくんだけど、HISASHIさんの演出においては、「お客さんはどう思うだろう?」というのが読めない。俺たちはデビューして20年経って、周りから「ずっと聴いてました」とか言われる、ある意味ベテランのバンドじゃない? そんなバンドがなんで今〇〇(先輩バンド)の「★★(曲名)」の替え歌をしなきゃいけないんだ!?みたいな(笑)。もし△△(〇〇のVo)さんの耳に入ったらどうしよう!? 謝るのは俺かな…(笑)。「なるほど、面白いこと考えるなぁ」と思うけどね。昔好きだったバンドが魅力を失っていく様を思い出したよ。たぶん、「こんな感じが聴きたいんでしょ?」というところに妥協点を見出だし、自分のイメージに捉われて、やりたいことをやらなくなるんだろうね。GLAYに至っては「落ち着かないなあ、お前ら」と。それでいいと思うしね。今回もキーボードがいないんだけど、「いや、今回はなんか工夫で」みたいな(笑)。工夫してもやっぱり、全然違うフレーズになるわけだよね。大人の立ち振る舞いとしてはファンの皆の思い出に寄り添っていくものかもしれないけど、ことGLAYの人たちは…。そういうのが全くメンバー誰一人として見受けられない。とある曲について、俺は「ギターソロはお客さんも期待してるだろうから、ちゃんとあったほうがいいんじゃないかな?」とHISASHIに言ったら、「やりたくねー!」って譲らないんだもん。ま、アイツが「絶対大丈夫」と言うなら、いいんじゃない? 心の底からやりたいことがあるなら、やればいいと思う。それがロックを目指したもののマナーだよね。そこにスピリットと愛があれば何でもいいんだよ。俺が毎朝スタジオへ行きたくなる理由も分かるよね。「今日は何が起こるんだろう?」ってドキドキするもん。もしかしたら“GLAY史上最も不評だった”とか、“最も意味が伝わりづらかった”と言われるツアーになるかもしれないけど、そういうのがないとバンドってダメよね。
③アリーナならではのスケールの大きさとか、ホールやライヴハウスとは全く違ったものがやっぱりあるから、例えばディズニーランドやユニバーサルスタジオといったアミューズメントパークの入り口をくぐった時のような、空間としての大きさを感じてもらえれば、と思います。今回は俺以外の3人が演出家。NYのブロードウェイでやっても絶対ウケないけど、GLAYファンの前でやったら絶対ウケるだろう、という演出がいっぱいあるよ。絶妙のピンポイント感だよね。今回は特に、各映像クリエイターたちとのコラボレーションが面白いんじゃないかな? 映像企画のために、HISASHIがリハの途中も俺らにカメラ向けるんだよ。アリーナツアーの出し映像をアーティスト自ら撮って編集するって、聞いたことないよね(笑)。今夜の飲み会も撮られる予定です(笑)。
■HISASHI
①準備期間のうちに各自のアプローチを詰めることができていて、初日から全曲通すことができたのは、アリーナツアーへの意識の高さが垣間見えたと思います。今回は久々にやる曲もあるんですけど、不思議なぐらい体が覚えてるんですよ。自分では忘れてるつもりのフレーズをすんなり弾けたりして、「あ、そうだ。こうやって弾いてたんだ」と気付いて。「じゃあ、その曲のDメロを弾いてみて」と言われたらできないんだけど、1曲通して弾くとちゃんと弾けちゃうんです。リハーサルは折り返し地点ですけども、ここで映像が来て、ここで着替えて…というブロックごとの段取りとかも含め、もうゲネプロに近い形でできるんじゃないかな? SEや映像も徐々に出来てきているので、本番さながらのスタイルになると思いますね。
②人がどう思うか分からないけど、自分的にはかなりスタンダードなアリーナツアーだとは思ってます。でも一つ言えるとしたら、今回の『SUMMERDELICS』というアルバムにはメンバーの個性が色濃く出ているので、“より一層そのメンバーの個性が豊かな楽曲に仕上るツアー”になるんじゃないかな?という望みはありますよね。コンサートはやはり曲だけではなく演出や映像というプラスαの部分でいろいろな表現ができるので、そこが楽しみです。
今回初めて空間のプロデュースみたいなこともできたんですよ。わりとシュールな演出になるんじゃないかな? ホラーですよ、かなり(笑)。ホラーというか、サスペンスかな。そういう緊張感のあるものにしたいな、と。映像ディレクターの方だったり、あとはモデルさんだったりとのコラボレーションで今つくっているんですけれども。「あのくだりは何だったんだろう?」とか「あの伏線はいつ回収されるんだろう?」とか、そういう難解な部分や不完全なところ、というか。帰り道でちょっとイヤーな気持ちになるような(笑)。「あー、楽しかった!」では帰さない、“含み”のようなものを一つフックとしてつくれればな、と。最近はデヴィッド・リンチ(※9)の『ツイン・ピークス』(※10)がWOWOWで放送されていますけど、ああいった「なんだろう、この気持ち悪い感じ…?」と思わせる世界が好きなんです。クローネンバーグ監督(※11)もそうだし。スプラッターなグロテスクさというよりは、後味の悪い感じが好き、というのが根源にあるんですよね。それもエンターテインメントであり、喜怒哀楽の一つに残る記憶でもあると思うから。
③GLAYのコンサートに久々に来る人もいるのかな? どうなんだろう? 俺は別に無理やりノッてほしいわけでもなくて、もちろん帰ってほしいわけではないんだけど、本当にそれぞれの楽しみ方でいいと思っているんですよ。その期待を損なわないような完成度には仕上げていると思います。最新のGLAYというバンドが何を思っているか? どのぐらい楽しくふざけられるか? 何を目指してるのか?を見られるツアーになると思いますよ。20年以上楽しんでやっているバンドの姿を、優しい目で見つめていただければ(笑)、こちらとしてもやりやすいので。まぁ、皆さんファンのプロなので、何が起きても大丈夫だと思いますが。かなりやんちゃな部分もありますので、楽しめると思います。
■JIRO
①個人的なことを言うと、悪くはない仕上がりだと思います。もうあと4、5回ぐらいしかないんだけど、リハーサルの直前が夏休みだったのもあり、もっと早目の7月ぐらいから練習し始めていたので、気が緩まなければ本番までになんとかなる気がする。先週リハーサルが始まって、4、5日休みを挟んだので、その間に自分でリハーサル音源を聴いて「ここはもうちょっとこうしたほうがいいな」とか、自分なりにアレンジし直したものを提案したり。前半戦・後半戦にリハーサル期間を分けるのは前回ぐらいから始めたスタイルなんだけど、その間の4、5日の時間的余裕が大事なんだよね。ただこなしていくだけだと、演奏は上手くなっていくかもしれないけど、細かいことを見つめ直すタイミングがないから。
リハーサルのムードはいつも通り和気藹々とはしてるんだけど、演奏しなければいけない曲がいつものライヴよりも多いので、ものすごく長時間になるんですよ。今までだったら皆で雑談してワーッと盛り上がったりもしていたんだけど、今回は終わると疲れ切って、「…帰るかぁ」みたいな感じになってます(笑)。
②自分のラジオでも言ったんですが、盛沢山過ぎて、“かつ丼とカレーライスのセットみたいなてんこ盛りのツアー”だなと思っていて(笑)。曲もそうだし演出面においても、今俺たちがやりたいことを詰め込んでみたらこんな感じになりました、という“引き算の余地なしのツアー”。だから、見どころはたくさんあるんじゃないでしょうか? 今回のアルバムに対する皆の熱量が高い分、今までのライヴとはちょっと違う気がします。2年ぶりのアリーナツアーだというのもあるし、ここのところシンプルな構成でホールツアーを行ってきてたので、たぶん皆やりたいことがいっぱいあって、気合が入ってるんじゃないかな? セットリストに関しては、「あれ聴きたかった・これ聴きたかった」という要望を俺はわりと聞くほうなんですよ。アンケートやラジオに寄せてくれるメッセージを読んで、そこから汲み取っています。あとは、バンドの中のムードとか、現実的なスケジュールとかも併せて組み立てるんだけど、今回は5月ぐらいの時点でセットリストはもう考えていて。それだけ長い時間があれば「覚えるのが大変だ」とは言っていられないと思うから、久々のナンバーが多いですね。でも、アリーナツアーなので、初めて観に来てくれるお客さんたちのこともないがしろにはできないので、ヒットソングも盛り込んでいます。
③この何年かはキーボードなしのバンドアレンジにこだわっていて、今回もキーボードは入らないんです。キーボードがあればサウンド的に華やかにはなるけど、俺たちの本質はそこではないから。やっぱりギターで構築していく音づくりをアマチュアの時からずっとしていて、今そこに原点回帰しようとしていて。それでもやっぱりキーボードの音がないと寂しい、というところから試行錯誤を重ねて、前のツアーに比べてバンドアレンジでカバーする部分をより一層増やしています。演出のほうが派手なのでそちらに目が行くとは思うんだけど、そういった音楽的な充実も是非感じてほしいですね。本来だったらキーボードとヴォーカルだけで展開していく曲のバンドアレンジで、ギター2人のアレンジだったところへ、さらに俺のベースを加えている曲もありますよ。「あ、キーボードの時とはアレンジが違うな」とちゃんと分かるような聴かせ方をしたいな、と思って。「キーボードがないと寂しい」と言われるのがやっぱりすごく悔しいので、「キーボードがなくても安心して聴けるな」と思ってもらえるような、そんな“2017年ヴァージョン”のアレンジを楽しんでほしいですね。
※1:【GLAY ARENA TOUR 2017“SUMMERDELICS”】
2017年9月23日に開幕する23公演23万人動員のアリーナツアー。新潟、大阪、宮城、広島、東京、北海道、神奈川、大阪、福岡、埼玉、愛知で開催。
※2:「彼女はゾンビ」
2016年1月27日リリース『G4・IV』収録。HISASHI作詞・作曲。「シン・ゾンビ」のもとになった曲。
※3:「シン・ゾンビ」
2017年7月12日リリース『SUMMERDELICS』収録。HISASHI作詞・作曲。「彼女はゾンビ」をもとに人気アーケードゲーム『太鼓の達人』とコラボした曲。
※4:YUKI
1993年にJUDY AND MARYのボーカルとしてデビュー、2002年にソロデビュー。GLAYと同郷の函館出身。
※5:It's a small world
東京ディズニーランドのアトラクション。戦争のない平和な世界をテーマとしており、世界中の子供たちが各国の民族衣装で「小さな世界」を歌う。
※6:イヤモニ
イヤーモニターの略。バンドの演奏を演者自身が聞くために用いるイヤフォンの一種。モニタースピーカーと併用する場合もある。
※7:『MUSIC LIFE』
2014年11月5日リリースの13th ALBUM。デビュー20周年となるGLAYの歩みを象徴するタイトルがつけられた。「DARK RIVER」(NHKドラマ10「激流」主題歌)、「BLEEZE」(コンタクトのアイシティーCMタイアップ曲)、「百花繚乱」(テレビ東京系番組「ヨソで言わんとい亭」エンディングテーマ)、「疾走れ!ミライ」(テレビ東京系アニメ「ダイヤのA」オープニングテーマ)などバラエティに富んだ楽曲を収録。
※8:『Miracle Music Hunt』
2014年11月29日から2015年2月22日にかけて開催されたGLAYのアリーナツアー。
※9:デヴィッド・リンチ
1946年1月20日、米国生まれの映画監督。代表作に『エレファント・マン』『ブルーベルベット』『ツイン・ピークス』『マルホランド・ドライブ』などがある。非常に作家性の強い作風で、カルト的な人気を誇る。
※10:『ツイン・ピークス』
1990年~1991年にデヴィッド・リンチが監督したテレビドラマシリーズ。1992年に映画が公開された。2017年にテレビドラマ『ツインピークス The Return』が放送開始。
※11:クローネンバーグ監督
1943年3月15日、カナダ出身の映画監督・脚本家。『ヴィデオドローム』、『ザ・フライ』、『裸のランチ』など。アンディ・ウォーホールなどから高い評価を受け人気を博す。
取材・文/青木 優
①リハーサル中盤ですが、雰囲気・仕上がりは現状いかがですか?
②“GLAY史上、最も〇〇なツアーになる!” その理由は?
③観に来られる方々へ向けて、一言メッセージをお願いします。
■TERU
①リハーサルはもう中盤になるので、今ステージに立っても通しでちゃんとできる仕上がり具合だと思います。久々に歌う曲もありますけど体に染み込んでいるみたいで、2、3回合わせるともう全部蘇ってくる、というか。だから、頭に入らないのはむしろ新曲のほうですね。「彼女はゾンビ」(※2)をずっと歌ってきているので、一回ゼロに戻して「シン・ゾンビ」(※3)にするのが大変です(笑)。演出上、自分たちが動いてどうこうする、という決めごとは今回ないので、その立ち位置を意識してリハする、というのも全くなくて。今回は映像をいかにして皆に楽しんでもらうか?というのが、新たに挑戦するGLAYのエンターテインメント。協力してくれる映像チームの人たちともガッチリお互いの意志をぶつけ合い、やり取りをしながら今準備を進めているので、本番には間に合うと思います。
②“GLAY史上、最もハチャメチャなツアー”になるんじゃないですかね? オープニングからエンディングまで、世界観が全く違うんですよ。映像の雰囲気もその都度違うし、メンバーそれぞれの個性が出たものになるんじゃないかな? これまで、HISASHIが自分の曲に入る前の映像を自分の世界観でつくる、という形はあったんですけど、今回は、HISASHIの持っている僕らにはない感性をGLAY全体に活かすことのできる演出・映像が多いので、僕としても楽しみです。僕は今回、「センターステージで、一人で歌いたい」という要望を今までになく伝えたんですよ。YUKI(※4)ちゃんのライヴを函館で観て影響を受けたところがあったからなんですけど、それがどういう形でどう皆さんに楽しんでもらえるかは、ライヴに来てからのお楽しみ…ということで!
今回はGLAYの4人がこのアリーナツアーに対してすごく強く想いを寄せてるなぁと感じますね。久々のアリーナツアーだし、その間にいろいろなものを吸収してきたんだろうな、というのが皆の言動から窺えるんです。20周年を無事に終えられて、ちょっとした心の余裕ができたのもあるでしょうね。「じゃあ、今度は自分たちが楽しめることをやっていこう」みたいな。いろんな人たちに受け入れられるものをつくるには、やっぱり客観的に見てもらって、その分野を専門とするトップの方たちの意見を聞くのが大事だと思っていましたけど、今後30周年に向かう時に、より自分たちが楽しめて、飽きずに「もう一度やりたい!」と思えるような…そんな空間をつくっていかなければいけない、と思うんです。今回のアリーナツアーは、そういう意味ですごくいいスタートを切れている気がします。
③It's a small world(※5)という言葉がありますけども、今回のツアーはIt's a HISASHI world(笑)。何が飛び出すか分からないですが、HISASHIの世界観を楽しんでほしいですね。まぁ、きっといろんな意見が出てくるとは思うんですけど(笑)、それも楽しんでいきたいな、と。ネタバレに気を付けて、ファンクラブの会報などに感想を送ってくれたらうれしいです!
■TAKURO
①メンバーからのアイディアがたくさん出ていて、それを一つずつ磨く1週間だったかな。TERUは日々イヤモニ(※6)と格闘してますよ。実は、ある曲の歌メロが違ってるんだけど、いつ言おう、いつ言おう…と思ってもう1週間(笑)。曲に入る前に「1回だけ聴いていい?」(TERU)というのを最初2曲ぐらい許したんだけど、待つのが嫌で3曲目からは「ダメ!」と(笑)。そこも含め、彼はきっと本番でうまく調整するんじゃないですかね? JIROはアレンジ面でもいろいろとアイディアをたくさん出してきて、本当にすごいですよ。HISASHIについては、アイツのやることは本番まで内容を知らないことがこれまでもあったんだけど、今回はそれがすげぇある(笑)。「お前、それいつ録ったんだ?」っていう効果音がいきなり入っていたり。演奏はロボ級に完璧だけどね。
演出面で言えば、それぞれが今まで「次のアリーナツアーではこれをやろう」と溜めてたのかな?と思うほど、各界の才能ある人たちとの連携を含め、たくさん準備していたみたいで。この段階で、俺もまだ観たことのない映像モノがいっぱいあるよ(笑)。もう、「好きにして!」しか言わないね。2日間公演で5、6曲変わるから、トータル30曲以上あるので、リハがGLAYには珍しく夕方6時近くなるんだよね。久しぶりに大鉈を振るうというか、大物、重鎮の曲たちが今回ちょっと顔を出すんですよ。‘90年代の曲は長いから自ずとライヴが長くなるし、前後の余韻も含めると結構ボリュームあるかな。でも、そういうのをちょっと今回はやりたかった。ホールツアーを経て、その前がアルバム『MUSIC LIFE』(※7)を引っ提げた『Miracle Music Hunt』(※8)で、エンターテインメント寄りだったし。今回はもう少しメッセージ優先の方向性で行きたかったんだよね。
②“GLAY史上、最もHISASHIの才能が渋滞してるツアー”なんじゃないかな? 今のNY並みの大渋滞! たかが10ブロック進むのに30分ぐらい掛かった。異常だよね…と、NY帰りの俺らしい表現をしてみましたが。通常ならば事前に「こんな感じ」とだいたいイメージはつくんだけど、HISASHIさんの演出においては、「お客さんはどう思うだろう?」というのが読めない。俺たちはデビューして20年経って、周りから「ずっと聴いてました」とか言われる、ある意味ベテランのバンドじゃない? そんなバンドがなんで今〇〇(先輩バンド)の「★★(曲名)」の替え歌をしなきゃいけないんだ!?みたいな(笑)。もし△△(〇〇のVo)さんの耳に入ったらどうしよう!? 謝るのは俺かな…(笑)。「なるほど、面白いこと考えるなぁ」と思うけどね。昔好きだったバンドが魅力を失っていく様を思い出したよ。たぶん、「こんな感じが聴きたいんでしょ?」というところに妥協点を見出だし、自分のイメージに捉われて、やりたいことをやらなくなるんだろうね。GLAYに至っては「落ち着かないなあ、お前ら」と。それでいいと思うしね。今回もキーボードがいないんだけど、「いや、今回はなんか工夫で」みたいな(笑)。工夫してもやっぱり、全然違うフレーズになるわけだよね。大人の立ち振る舞いとしてはファンの皆の思い出に寄り添っていくものかもしれないけど、ことGLAYの人たちは…。そういうのが全くメンバー誰一人として見受けられない。とある曲について、俺は「ギターソロはお客さんも期待してるだろうから、ちゃんとあったほうがいいんじゃないかな?」とHISASHIに言ったら、「やりたくねー!」って譲らないんだもん。ま、アイツが「絶対大丈夫」と言うなら、いいんじゃない? 心の底からやりたいことがあるなら、やればいいと思う。それがロックを目指したもののマナーだよね。そこにスピリットと愛があれば何でもいいんだよ。俺が毎朝スタジオへ行きたくなる理由も分かるよね。「今日は何が起こるんだろう?」ってドキドキするもん。もしかしたら“GLAY史上最も不評だった”とか、“最も意味が伝わりづらかった”と言われるツアーになるかもしれないけど、そういうのがないとバンドってダメよね。
③アリーナならではのスケールの大きさとか、ホールやライヴハウスとは全く違ったものがやっぱりあるから、例えばディズニーランドやユニバーサルスタジオといったアミューズメントパークの入り口をくぐった時のような、空間としての大きさを感じてもらえれば、と思います。今回は俺以外の3人が演出家。NYのブロードウェイでやっても絶対ウケないけど、GLAYファンの前でやったら絶対ウケるだろう、という演出がいっぱいあるよ。絶妙のピンポイント感だよね。今回は特に、各映像クリエイターたちとのコラボレーションが面白いんじゃないかな? 映像企画のために、HISASHIがリハの途中も俺らにカメラ向けるんだよ。アリーナツアーの出し映像をアーティスト自ら撮って編集するって、聞いたことないよね(笑)。今夜の飲み会も撮られる予定です(笑)。
■HISASHI
①準備期間のうちに各自のアプローチを詰めることができていて、初日から全曲通すことができたのは、アリーナツアーへの意識の高さが垣間見えたと思います。今回は久々にやる曲もあるんですけど、不思議なぐらい体が覚えてるんですよ。自分では忘れてるつもりのフレーズをすんなり弾けたりして、「あ、そうだ。こうやって弾いてたんだ」と気付いて。「じゃあ、その曲のDメロを弾いてみて」と言われたらできないんだけど、1曲通して弾くとちゃんと弾けちゃうんです。リハーサルは折り返し地点ですけども、ここで映像が来て、ここで着替えて…というブロックごとの段取りとかも含め、もうゲネプロに近い形でできるんじゃないかな? SEや映像も徐々に出来てきているので、本番さながらのスタイルになると思いますね。
②人がどう思うか分からないけど、自分的にはかなりスタンダードなアリーナツアーだとは思ってます。でも一つ言えるとしたら、今回の『SUMMERDELICS』というアルバムにはメンバーの個性が色濃く出ているので、“より一層そのメンバーの個性が豊かな楽曲に仕上るツアー”になるんじゃないかな?という望みはありますよね。コンサートはやはり曲だけではなく演出や映像というプラスαの部分でいろいろな表現ができるので、そこが楽しみです。
今回初めて空間のプロデュースみたいなこともできたんですよ。わりとシュールな演出になるんじゃないかな? ホラーですよ、かなり(笑)。ホラーというか、サスペンスかな。そういう緊張感のあるものにしたいな、と。映像ディレクターの方だったり、あとはモデルさんだったりとのコラボレーションで今つくっているんですけれども。「あのくだりは何だったんだろう?」とか「あの伏線はいつ回収されるんだろう?」とか、そういう難解な部分や不完全なところ、というか。帰り道でちょっとイヤーな気持ちになるような(笑)。「あー、楽しかった!」では帰さない、“含み”のようなものを一つフックとしてつくれればな、と。最近はデヴィッド・リンチ(※9)の『ツイン・ピークス』(※10)がWOWOWで放送されていますけど、ああいった「なんだろう、この気持ち悪い感じ…?」と思わせる世界が好きなんです。クローネンバーグ監督(※11)もそうだし。スプラッターなグロテスクさというよりは、後味の悪い感じが好き、というのが根源にあるんですよね。それもエンターテインメントであり、喜怒哀楽の一つに残る記憶でもあると思うから。
③GLAYのコンサートに久々に来る人もいるのかな? どうなんだろう? 俺は別に無理やりノッてほしいわけでもなくて、もちろん帰ってほしいわけではないんだけど、本当にそれぞれの楽しみ方でいいと思っているんですよ。その期待を損なわないような完成度には仕上げていると思います。最新のGLAYというバンドが何を思っているか? どのぐらい楽しくふざけられるか? 何を目指してるのか?を見られるツアーになると思いますよ。20年以上楽しんでやっているバンドの姿を、優しい目で見つめていただければ(笑)、こちらとしてもやりやすいので。まぁ、皆さんファンのプロなので、何が起きても大丈夫だと思いますが。かなりやんちゃな部分もありますので、楽しめると思います。
■JIRO
①個人的なことを言うと、悪くはない仕上がりだと思います。もうあと4、5回ぐらいしかないんだけど、リハーサルの直前が夏休みだったのもあり、もっと早目の7月ぐらいから練習し始めていたので、気が緩まなければ本番までになんとかなる気がする。先週リハーサルが始まって、4、5日休みを挟んだので、その間に自分でリハーサル音源を聴いて「ここはもうちょっとこうしたほうがいいな」とか、自分なりにアレンジし直したものを提案したり。前半戦・後半戦にリハーサル期間を分けるのは前回ぐらいから始めたスタイルなんだけど、その間の4、5日の時間的余裕が大事なんだよね。ただこなしていくだけだと、演奏は上手くなっていくかもしれないけど、細かいことを見つめ直すタイミングがないから。
リハーサルのムードはいつも通り和気藹々とはしてるんだけど、演奏しなければいけない曲がいつものライヴよりも多いので、ものすごく長時間になるんですよ。今までだったら皆で雑談してワーッと盛り上がったりもしていたんだけど、今回は終わると疲れ切って、「…帰るかぁ」みたいな感じになってます(笑)。
②自分のラジオでも言ったんですが、盛沢山過ぎて、“かつ丼とカレーライスのセットみたいなてんこ盛りのツアー”だなと思っていて(笑)。曲もそうだし演出面においても、今俺たちがやりたいことを詰め込んでみたらこんな感じになりました、という“引き算の余地なしのツアー”。だから、見どころはたくさんあるんじゃないでしょうか? 今回のアルバムに対する皆の熱量が高い分、今までのライヴとはちょっと違う気がします。2年ぶりのアリーナツアーだというのもあるし、ここのところシンプルな構成でホールツアーを行ってきてたので、たぶん皆やりたいことがいっぱいあって、気合が入ってるんじゃないかな? セットリストに関しては、「あれ聴きたかった・これ聴きたかった」という要望を俺はわりと聞くほうなんですよ。アンケートやラジオに寄せてくれるメッセージを読んで、そこから汲み取っています。あとは、バンドの中のムードとか、現実的なスケジュールとかも併せて組み立てるんだけど、今回は5月ぐらいの時点でセットリストはもう考えていて。それだけ長い時間があれば「覚えるのが大変だ」とは言っていられないと思うから、久々のナンバーが多いですね。でも、アリーナツアーなので、初めて観に来てくれるお客さんたちのこともないがしろにはできないので、ヒットソングも盛り込んでいます。
③この何年かはキーボードなしのバンドアレンジにこだわっていて、今回もキーボードは入らないんです。キーボードがあればサウンド的に華やかにはなるけど、俺たちの本質はそこではないから。やっぱりギターで構築していく音づくりをアマチュアの時からずっとしていて、今そこに原点回帰しようとしていて。それでもやっぱりキーボードの音がないと寂しい、というところから試行錯誤を重ねて、前のツアーに比べてバンドアレンジでカバーする部分をより一層増やしています。演出のほうが派手なのでそちらに目が行くとは思うんだけど、そういった音楽的な充実も是非感じてほしいですね。本来だったらキーボードとヴォーカルだけで展開していく曲のバンドアレンジで、ギター2人のアレンジだったところへ、さらに俺のベースを加えている曲もありますよ。「あ、キーボードの時とはアレンジが違うな」とちゃんと分かるような聴かせ方をしたいな、と思って。「キーボードがないと寂しい」と言われるのがやっぱりすごく悔しいので、「キーボードがなくても安心して聴けるな」と思ってもらえるような、そんな“2017年ヴァージョン”のアレンジを楽しんでほしいですね。
※1:【GLAY ARENA TOUR 2017“SUMMERDELICS”】
2017年9月23日に開幕する23公演23万人動員のアリーナツアー。新潟、大阪、宮城、広島、東京、北海道、神奈川、大阪、福岡、埼玉、愛知で開催。
※2:「彼女はゾンビ」
2016年1月27日リリース『G4・IV』収録。HISASHI作詞・作曲。「シン・ゾンビ」のもとになった曲。
※3:「シン・ゾンビ」
2017年7月12日リリース『SUMMERDELICS』収録。HISASHI作詞・作曲。「彼女はゾンビ」をもとに人気アーケードゲーム『太鼓の達人』とコラボした曲。
※4:YUKI
1993年にJUDY AND MARYのボーカルとしてデビュー、2002年にソロデビュー。GLAYと同郷の函館出身。
※5:It's a small world
東京ディズニーランドのアトラクション。戦争のない平和な世界をテーマとしており、世界中の子供たちが各国の民族衣装で「小さな世界」を歌う。
※6:イヤモニ
イヤーモニターの略。バンドの演奏を演者自身が聞くために用いるイヤフォンの一種。モニタースピーカーと併用する場合もある。
※7:『MUSIC LIFE』
2014年11月5日リリースの13th ALBUM。デビュー20周年となるGLAYの歩みを象徴するタイトルがつけられた。「DARK RIVER」(NHKドラマ10「激流」主題歌)、「BLEEZE」(コンタクトのアイシティーCMタイアップ曲)、「百花繚乱」(テレビ東京系番組「ヨソで言わんとい亭」エンディングテーマ)、「疾走れ!ミライ」(テレビ東京系アニメ「ダイヤのA」オープニングテーマ)などバラエティに富んだ楽曲を収録。
※8:『Miracle Music Hunt』
2014年11月29日から2015年2月22日にかけて開催されたGLAYのアリーナツアー。
※9:デヴィッド・リンチ
1946年1月20日、米国生まれの映画監督。代表作に『エレファント・マン』『ブルーベルベット』『ツイン・ピークス』『マルホランド・ドライブ』などがある。非常に作家性の強い作風で、カルト的な人気を誇る。
※10:『ツイン・ピークス』
1990年~1991年にデヴィッド・リンチが監督したテレビドラマシリーズ。1992年に映画が公開された。2017年にテレビドラマ『ツインピークス The Return』が放送開始。
※11:クローネンバーグ監督
1943年3月15日、カナダ出身の映画監督・脚本家。『ヴィデオドローム』、『ザ・フライ』、『裸のランチ』など。アンディ・ウォーホールなどから高い評価を受け人気を博す。
取材・文/青木 優