FREE BLOG

Vol.71 JIRO WEBインタビュー

台湾、そして香港でのライヴが目前に迫ったGLAY。昨年末からはメンバー個々の活動に移っていたので、2018年のGLAYはこのアジア・ツアーからお目見えという形になる。今回はそれに当たってJIROに単独インタビューを敢行。彼は2月上旬まではTHE PREDATORS(※1)で全国ツアーを廻っており、その楽しそうな姿を見たファンも多いだろう。取材を行ったのはそのアジア公演のためのリハーサル・スタジオのロビー。TAKUROをはじめメンバーが「おはようございまーす」と徐々に集まってくるそばで、今の心境をニュートラルに語ってくれたJIROだった。

JIROくんは2月にTHE PREDATORSのツアーを終えたわけですが、去年の年末まではGLAYのアリーナ・ツアーがありました。このところ、そうしてライヴと制作が交互に連なっている状態がずっと続いているんですが、それはいかがですか?

JIRO:そうですね。でも、そのペースで気持ち的に落ち着いてるところがあります。今はTHE PREDATORSが終わって、主にアジア・ツアーに向けての個人練習の時間に当てています。で、今回演奏するのが『SUMMERDELICS』のツアー(※2)でやってきた曲が大半なので、「2ヵ月空いてるので忘れてるかな?」と覚悟してたんですけど、意外と覚えてました。それがわかったら一気に気が抜けて、もう何にもしたくなくなって(笑)……今は家で音楽聴いたり映画観たり、のんびりしてますね。

(笑)そういう時間も必要でしょう。で、それだけ曲が身体に入り込んでたわけですね。

JIRO:そうですね。(『SUMMERDELICS』(※3)収録曲の)フレーズは難しかったんですけど、そのぶん集中してやっていたからなのか、けっこう覚えていました。間にTHE PREDATORSのツアーが入ってたから、絶対忘れてるかなと思ってたんですけど、意外と……別腹じゃないですけど(笑)、こっちはこっちで残ってましたね。バンド演奏という、基本的には同じことをやっているとはいえ、(ふたつのバンドでは)ちょっとテイストが違うというか。

そう、そこをあらためて聞いておきたいんですけど。「これからライヴをやります」という段階だとして、GLAYとTHE PREDATORSの感覚は、どのぐらい同じで、どのぐらい違うものなんですか?

JIRO:けっこう違いますね。GLAYの場合は、身体が緊張して指が攣ったりしないように、ライヴ前に時間を作って楽屋でトレーニングをしたりします。そうして軽い筋トレをして、身体の緊張をほぐしてからヘアメイクして本番に臨む、みたいな感じなんですけど。THE PREDATORSの場合は……本番前にはストレッチぐらいですね(笑)。これはいい意味で言うんですけど、ライヴハウスのほうはお客さんが勝手に楽しんでくれるというか。だから「こっちはただ演奏するだけでいいかな」という感じなんですよ。それがGLAYだと……会場がアリーナとかなら、ほんとに後ろのほうのお客さんには「なーんだ、この席だと楽しめるのか、わかんないな」みたいな人たちもいっぱいいると思うんです。でもライヴをやる以上、そういう人たちも納得させないといけない。そのためには(意識として)より遠くに届けようとするので……気持ち的には疲れるんでしょうね。

なるほど。会場がアリーナのように大きな規模だと、演出や仕込みのことを意識しないといけないのもあるんじゃないですか?

JIRO:まあ、そうですね。ただ、演出に任せておけばいいかといえば、そうでもないんです。GLAYに関しては、(自分たちの)後ろで面白い映像が流れてても、俺たちのほうを見てるファンの人たちにアピールしなきゃいけない!という気持ちがあるんですね。セットや映像があるので俺たちはただ黙々と弾きますよ、みたいなバンドじゃないので。だから「一瞬たりとも気を抜けないな」というのはあります。

ああ、演出の段取りとかよりも、やっぱり演奏への集中力のほうが大事だと。そうですね、GLAYの時のJIROくんは、ほんとに魂で弾いてるように見えるんですよ。で、それに対してTHE PREDATORSではもっとこう、気持ち良さのほうが伝わってくるというか。

JIRO:(笑)それは今回、自分でもあらためて思いました。THE PREDATORSは、それこそ遊びなんですよ。だから、とにかく気楽に演奏できるなって。まあお客さんには同じようにチケットを買ってもらって、来てもらってるんですけど……THE PREDATORSは「お金払ってくれてるけど、俺たちの趣味的な遊びを見たいんだよね? だから俺たちは好き勝手やるよ。それでも見たいんなら、どうぞ!」みたいな(笑)。そういうのに近いかもしれないですね。

そうそう。すごくわかります。

JIRO:それが今はより濃くなったなと思います。だからTHE PREDATORSは、やるべきことをやる、それで楽しんでるものを見てもらう、という感じですね。GLAYの時は「こんなのもありますけど、どうですか?」「みなさん、楽しんでる?」という気遣いがあるかもしれないです。

今回、THE PREDATORSはツアーファイナルのZepp DiverCityを見せてもらったんですけど、その「楽しんでやってるな」と思った瞬間のひとつが、アンコールで缶ビールを飲んでる姿を見た時でした。ああいうの、GLAYではやらないですよね?

JIRO:うーんと、昔はやりましたけどね……90年代後半とか、ライヴハウスでやってる頃とかですけど。あれはピロウズが毎回やってるんですよね。アンコールで出てきて、みんなでトークを回しながら飲む。(山中)さわおさん(※4)はそのスタイルをTHE PREDATORSに取り入れたんです。で、ピロウズの場合は、基本的にさわおさんがしゃべって、誰かが面白い話をしたらさわおさんが突っ込んで、みたいな感じなんですけど。俺たちの場合は、ほんとに全員自由で(笑)。高橋(宏貴)くん(※5)も自由だから突然何を言い出すかわからないというのも含めて、面白かったですね。

だってDiverCityの時の2回目のアンコールなんて、出てきてからのMCが15分もあって、そのあとの最後の曲は2分ちょっとでしたからね。

JIRO:そうそう! そうなんですよ(笑)。あのDiverCityの時のMCは相当面白かったですね。俺もあらためてオフライン(=編集の映像)のチェックをするために家で観てて、爆笑しましたから(笑)。

で、THE PREDATORSはそのツアーのDVDが出ることになっていて、楽しいライヴの模様が収録されていると思うのですが。これに収録される特典映像について、高橋くんがブログで「ふたりに騙された」みたいなことを書いてましたよね。

JIRO:(笑)そうなんですよ。まず高橋くんには「ある曲のミュージックビデオを撮ります」という企画を伝えておいたんですけど、ほんとのことは内緒にしといて……その場でいきなり曲を作ってもらったんです。実はツアー中からさわおさんが高橋くんに「お前は今回(のEP)でも1曲採用されてるけど、俺にプレゼンする時に2曲しか作ってこなかったよな? しかも前回初めて作った時は、まさかの1曲しか書いてこなかった。JIROくんを見てみろよ! 毎回4曲も5曲も作って俺にプレゼンしてくるんだぞ? お前はどんだけ偉いんだ!」みたいな話をしていたんですよ。いじりみたいな感じで。で、「今後もまだ作りたいのか?」「はい、もちろんです」みたいな振りがあって、「そんなに曲が作りたいなら今から作ってみろ! 1時間やるから曲作れ!」って。「それで俺が歌詞書いて、バンド・アレンジして、今日すぐレコーディングしよう!」みたいな。それをやったんですよ。だから新曲ができたんです(笑)。

(笑)それはどういう映像になっているのか、楽しみですね。それからTHE PREDATORSは4月にARABAKI ROCK FEST.(※6)に出ることが決まってますね。

JIRO:8年ぶりらしいんですよね。その時は緊張していないようで、けっこう緊張していた記憶があります。僕自身、フェスって特別な空気感だなと感じてるところがあって……気持ちがちょっと浮ついてるんだけど、バシッときめないとな、みたいな。そういうヘンな緊張感があったような気がします。でも今回はツアー明けだし、今の俺だったらあんまり気負わずに、普通に楽しめるんじゃないかな。フェスに来てる人たちも、めったに観れるバンドじゃないし、曲が単純で乗りやすいと思うので、観たい人は来てほしいですね。なので、自分としては前回とはちょっと違う感じでやれそうです。まあ……間違えても何でも、俺たちが楽しけりゃいいや、みたいなところもありますけど。遊びのバンドなので(笑)。

(笑)始まりから、そうでしたからね。そしてGLAYのほうはアジア・ツアーがもうすぐなんですが、今どんな気持ちで向かっていますか?

JIRO:気持ち的には、まだ現実味がないですね。というのも今回はリハーサルが短くて、4日だけなんです。ただ、去年の6月に「金曲奨」(※7)という台湾の音楽祭に行って、実際に僕らがライヴをやる台北アリーナでパフォーマンスさせてもらったんですけど、そこがとんでもなく広いんですよ。日本だと、さいたまスーパーアリーナぐらいかな? すごくぜいたくな造りの会場で、若干ビビってたんです。だけどその後GLAYでアリーナ・ツアーやって、THE PREDATORSでまた「やっぱり音楽って楽しいな」みたいなお気楽ムードもちょっと味わえたので(笑)、今はプレッシャーはあまり感じてないですね。

はい。それこそ、これだけライヴをやってきてますからね。

JIRO:うん。それに最近だんだん開き直ってきてて、「どんなに練習しても、間違える時は間違える」みたいなところもあるんですよ(笑)。これは表現的にはあまり良くないかもしれないけど、(演奏のミスは)交通事故みたいなものだと思ってるんです。「何で今まで弾いてたものが突然スコーンって抜けたりするんだろうな?」って思うんですね。べつに気を抜いてるわけじゃないのに。でも「そういうことって普通に起こりうるな、だからそれに関してはしょうがないな」って。「そこで落ち込むよりは、これ以上の失敗はないだろうから、逆に楽しんでやろう!」と思ったほうがいいかなって思ってます。

JIROくんは、台湾や香港という土地には、どんな思い出や印象を持っています?

JIRO:台湾には2001年のEXPO(※8)の時から仲良くしてる地元のバンドがいて、僕らが台湾に行く時には応援に駆け付けてくれるので、いろいろと思い入れがありますね。香港は前回アリーナをやるまで、俺たちが(香港について)とくに何かを語ったことはなかったけど、でもライヴをやってみたらGLAYを知ってくれてる人たちがすごくいてくれたことに、まずビックリしました。90年代の後半ぐらいに「GLAYが現地ではすごく人気があるよ」って言われてたのを聞いたことがあったんですけど、それから10何年も経っているわけだし、自分たちからは何のアクションも起こしてなかったし、「やってみたところで、もしかしたら閑散としてるのかもしれないな」なんて思ってたんですけど、そんなことはなかったです。それはかなり自信になりましたね。まあ、どちらも楽しんでやれたらと思います。

ライヴをする上で、日本と違う感じってあるんですか?

JIRO:全然違いますね。自分たちと同じような顔つきをしてても、やっぱり外国なので……それこそステージからでも日本語で唄ってくれてる人たちがいっぱい見えるので、それには純粋に感動しますね。それに今、GLAYで日本国内でライヴやってても「香港」とか「台湾」とか書いたプレートを持って遠慮がちにアピールしてくれてる人がいますけど、そういうのを見ると、うれしいですね。

いわば、音楽が国境を超えている瞬間ですものね。

JIRO:そうですね。日本の人たちでも「GLAYのチケット取れない」って言ってるファンがいるのに、海外から僕たちを観るためにお金もかけて手間暇もかけて来てくれてるわけだから……それはうれしいですね。

この2公演のセットリストはどんなものになりますか?

JIRO:『SUMMERDELICS』のツアーからは3分の1くらい変えて、メジャーな曲を入れてます。とはいえ、アルバムのツアーのひとつで行く感じではありますけど。あと、その去年6月の金曲奨でTERUが唄いながら客席を見渡した時に、すごい焦ってたらしいんですよ。「ほんとに入るのかな、これ?」みたいに。で、台湾でライヴをやることが発表になったのが前回のアリーナ・ツアーの最中だったんですけど、TERUが福岡の時に「福岡と台湾、近いんでしょ? みんな来ちゃいなよ!」みたいなことをMCで言ってて(笑)。そのおかげもあって、日本からもたくさん観に来てくれるみたいです。そうなると「何度も演奏してるようなメジャーな曲ばかりじゃ、まずいんじゃないかな?」というのもあるので、うまいこと何曲かレア曲を入れてみたりしようと思います。

ということは、ツアーの特別版みたいな内容になりそうですね。向こうはこちらよりも暖かいでしょうし、いいコンディションでできるといいですね。

JIRO:うん、大丈夫じゃないですかね。メンバーとも話してたんですけど、海外といっても地理的には近いので、国内を移動するような感覚でやれたらいいなと思います。「アジア・ツアーです!」みたいな感じでやるよりは、日本と同じような感覚で行けたらいいなって。

では、その成功を祈ってます。

JIRO:はい! ありがとうございます!

文・青木優

※1:THE PREDATORS
2005年結成。the pillowsの山中さわお、GLAYのJIRO、ストレイテナーのナカヤマシンペイで結成。ナカヤマは2010年3月に脱退。ELLEGARDEN、Scars Boroughの高橋宏貴が加入。いままでにアルバム5枚、DVD3枚をリリース。今年1月に会場販売と通信販売限定シングル「Arabian dance」をリリース。約2年半ぶりの全国ツアー「Arabian Dance Tour」も開催。

※2:『SUMMERDELICS』のツアー
2017年9月23日(土・祝)朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンターから12月17日(日)愛知・日本ガイシホールまで23公演で開催されたアリーナツアー。

※3:『SUMMERDELICS』(アルバム)
前作より2年8ヶ月ぶりとなるGLAYにとって14枚目のオリジナルアルバム。2017年7月12日(水)発売。7月24日付けオリコン週間CDアルバムランキングで1位を獲得した。

※4:ピロウズ・さわおさん
1968年12月7日、北海道出身。1989年結成のthe pillowsでVo.&Gを務める。JIROと意気投合してTHE PREDATORSを結成。

※5:高橋(宏貴)くん
ドラマー。1998年にELLEGARDEN 結成を結成。2008年、Scars Borough を結成。2010年にTHE PREDATORSに加入。

※6:ARABAKI ROCK FEST.
2001年から仙台近郊で開催されているロックフェスティバル。THE PREDATORSは今年、2010年以来8年ぶりの出演となる。

※7:「金曲奨」
台湾のグラミー賞とも呼ばれる音楽に関する賞。台湾の3大娯楽賞の一つ。2017年6月24日(土)に開催された第28回金曲奨でGLAYは特別パフォーマンスを行なった。

※8:2001年のEXPO
GLAY EXPO 2001 "GLOBAL COMMUNICATION"、東京スタジアム(現・味の素スタジアム)、北海道・石狩市青葉公園特設ステージ、北九州マリナクロス新門司ステージで開催された。九州公演には紫雨林(韓国)、DOME(タイ)、ニコラス・ツェー(香港)、メイデイ(台湾)、The d.e.p (ビビアン・スー、佐久間正英、土屋昌巳、ミック・カーン、屋敷豪太による日台英混合バンド)が出演した。